週刊ベースボールONLINE

高校野球リポート

“平成最後の怪物”佐々木朗希がさらに成長した5つのポイント

 

今季初の対外試合で156キロ


大船渡高の157キロ右腕・佐々木朗希は作新学院高(栃木)との練習試合で今季実戦初登板。順調な調整ぶりを見せている


 甲子園でセンバツ準々決勝が行われた3月31日、栃木には「平成最後の怪物」を視察するために多くのプロ関係者が集結した。

 日米18球団のスカウトが注目したのは大船渡高の157キロ右腕・佐々木朗希である。菊池雄星(花巻東高−現マリナーズ)、大谷翔平(花巻東高−現エンゼルス)に続く、岩手が生んだ怪物右腕だ。

 2016年夏の甲子園を制した強豪・作新学院高(栃木)との練習試合に先発し、3回1安打無失点(6奪三振)に抑えた。今季初の対外試合ながら自己最速にあと1キロに迫る156キロを計測し、NPB全12球団に加え、MLB6球団、約50人のプロ野球関係者の前で衝撃的な投球を披露している。

 昨秋は岩手県大会準決勝で敗退し、3位決定戦も惜敗して、東北大会出場をあと1勝のところで逃している。冬場を経て何がすごくなったのか。スカウト、指導者、選手の談話を裏付けとして5つポイントに絞ってみる。

 まずは言うまでもなく、ストレートの精度だ。本人は8割程度と言いながらも、150キロ超を連発。初視察となった巨人・長谷川国利スカウト部長は「菅野(智之)と真っすぐだけなら負けていない。今、プロの中に入っても3本の指に入る。長年(スカウトを)やっていますけど、これは、すごい!!」と目を丸くさせた。

 2つ目は、球威だけでなく、昨秋に比べて格段に制球力が上がった。最大の見せ場は2回裏。先頭打者に三塁打を浴びた後は、圧巻の三者連続空振り三振。佐々木は「3個取れたのは大きかった」と、この日の収穫に挙げている。3人目の打者は右打者の外角低めへ、ビシッと力強いボールが決まった。

「担当スカウトからは、やや荒れたり、抜けたりするボールもあると聞いていましたが、そんなことはない。アウトローのボールが素晴らしかった。評判以上。(ドラフト)1位は揺るぎない。重複も必至でしょう」(ヤクルト・橿渕聡編成部スカウトグループ・デスク)

 3つ目は変化球の精度アップ。ストレートと同じ腕の振りで投じられるスライダーは、ネット裏から見ても打者の手前でグイッと曲がって落ちていく。チェンジアップ、フォークもコースに決まっており、はまった際の攻略は至難の業と言える。2三振を喫した作新学院高の三番・遊撃手の石井巧主将は「完敗でした……」と脱帽した上で、こう語った。

「体験したことのないスピードに、制球力ものっかってくる。スライダーは見えなかった……。難しい。あの真っすぐが頭の中にあるので……。追い込まれるまでに、勝負を仕掛けていかないといけない」

 球の質が上がった要因として、体の成長も外せない。これが4つ目。身長が1センチ伸びて190センチとなり、体重は5キロ増の86キロ。昨秋は下半身が細いイメージがあったが、しっかりと鍛えてきたことは明らかだ。

「練習を見ていても、取り組みがしっかりしている。入学時は細かったですが147キロ。1年生で見たことのない球質に、ビックリした記憶があります。順調に成長しており、現時点でもプロで戦える。いずれは、球界を代表する選手になる」(ソフトバンク作山和英スカウト)

進路志望は「プロ1本」


 最後に注目度が高い中でも、しっかりと結果を残すことができる強い精神力が備わっていること。佐々木は「初登板で緊張しましたが、しっかりゲームを壊さないでできたのは良かった」と控えめに語るが、並のメンタルではない。

「(スカウト、報道陣を含め)これだけの観客の中で、持っているものを出せる。目標を立てて、ここまで取り組んできたのだと思います。夏までにどこまで伸びるのか。周囲の期待にこたえそうな雰囲気がある」(オリックス牧田勝吾アマチュアチーフスカウト)

 大船渡高・國保陽平監督は騒然としたムードでも、冷静な投球ができた理由をこう明かす。

「大谷翔平投手と菊池雄星投手のおかげです。(メジャー・リーグで活躍する)すごい選手になって、岩手の高校生は皆、2人のようになりたいと思っている。天狗になるとかではなくて、素直に上を目指していきたい、と。自分のできることを淡々と……。それが、落ち着きにつながっているのだと思います」

 2019年ドラフトの超目玉。佐々木は卒業後の進路志望として「プロ1本です」と決意を語った。メジャー・リーグについては「今はないですけど、これから、そのとき、そのときで考えていきたい」と言葉を選んで話した。

 ただ、あくまで照準は夏である。

「目標としてチームで甲子園。そのために(地元の)この学校を選んだ。(地元で一緒だった)今のメンバーと行くことに意味がある。(岩手は)長い期間、公立校が出ていないので、自分たちが勝って、新しい時代を作りたい。小、中学生にも、頑張ればこういう場所からでも行けるんだ!! というところを見せていきたい」

 岩手の県立校・大船渡高をけん引する佐々木朗希が、2019年ドラフト戦線の顔となる。

文=岡本朋祐 写真=佐藤博
週刊ベースボール編集部

週刊ベースボール編集部

週刊ベースボール編集部が今注目の選手、出来事をお届け

関連情報

みんなのコメント

  • 新着順
  • いいね順

新着 野球コラム

アクセス数ランキング

注目数ランキング