熱戦が繰り広げられている高校野球大阪大会。果たして、甲子園の切符をつかむのはどのチームか。主役となるであろう、注目選手をクローズアップする。 西野力矢(にしの・りきや)
内野手/180センチ89キロ/右投右打/2年
小学生になる前の話だ。2006年秋、地元・和歌山の紀三井寺球場で見たアーチに心を動かされた。「めっちゃ飛んでいたのを覚えています」。打ったのは、後に先輩となる
中田翔(現
日本ハム)だった。
「大阪桐蔭は何度も甲子園で見て、めちゃくちゃ強かったので気になっていました」。あこがれてきた強打のチームで、2年生ながら「一番の好打者」と評されるようになった。
昨秋、今春の公式戦14試合で4本塁打、27打点を記録。いずれもチームトップの成績だが、最も目を引く数字は打率だ。.509。ボールをとらえる技術と対応力は好打者が並ぶ大阪桐蔭のなかでも卓越している。
本人がこだわるのは、打点だ。「OBで中軸を打っていた方々も、走者をかえすイメージが強い」。勝負強さを求めるようになったのは、昨夏の経験があるからだ。
史上初となる2度目の春夏連覇に向かう先輩たちの姿を、ボールボーイとして近くから見ていた。北大阪大会の履正社戦は、特に鮮明に覚えている。1点差の9回二死からの逆転劇。「誰もあきらめていなかった。先輩たちの勝利にかける思いのすごさを知りました」。
金足農との決勝を制した後、
根尾昂(現
中日)から「これ持っておいて」と優勝盾を預かった。
「優勝旗も持たせてもらって重かったんですけど、いち高校野球ファンみたいな感じで……。野球をやっていて一番といっていいくらいの経験だったと思います」
主力になった昨秋も今春も、まだ優勝に立ち会えていない。あの喜びを、今度は自分のバットで仲間に味わわせるつもりだ。
文=朝日新聞社 大阪本社スポーツ部 小俣勇貴 写真=BBM