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2019夏甲子園

[甲子園・記者コラム]ポジション別ドラフト候補のスカウト評価は?

 

日本中が注目する甲子園。現地で取材を行う記者が、その目で見て、肌で感じた熱戦の舞台裏を写真とともにお届けする。

No.1評価は星稜・奥川


 大会7日目(8月12日)の第3試合。1回戦を勝ち上がった八戸学院光星(青森)と、2回戦から登場した智弁学園(奈良)との一戦で、出場全49校が出そろった。

 ネット裏で視察したスカウトに選手評価を聞いた。ポジション別に掲載していく。

星稜・奥川は2019年夏の甲子園におけるスカウト評価No.1。10月17日のドラフト会議における1位指名が有力視されている(写真=BBM)


【投手】
 2019年のドラフト戦線は年明けの段階から「高校生BIG4」が注目を浴びた。大船渡・佐々木朗希、横浜・及川雅貴、創志学園・西純矢が夏の甲子園出場を逃した中で、星稜・奥川恭伸のみが夏切符を手にした。しかも、2年春から4季連続出場である。

 ヤクルト・橿渕聡スカウトグループデスクは奥川について「私たちの判断基準で『即戦力』でどうなのか? というレベルにきている。そこが今回の甲子園で一番の注目のポイント」と、奥川の大会であったことを示唆。

 投手の第2グループとして推したのは霞ヶ浦・鈴木寛人と津田学園・前佑囲斗。ヤクルト・橿渕スカウトグループデスクは「(初戦敗退を喫した)鈴木投手は本来の力を発揮できなかったが、潜在能力の高さを見た。前投手は阪神藤川球児投手のようなストレートの質。習得しようと努力してもできない分野です。左腕では近江・林優樹、高松商・香川卓摩はすぐにプロというわけではないかもしれませんが、今後もマークしていきたい素材。ウチの石川(雅規)みたいに、投球術で勝負できるタイプだと思います」と話した。

 なお、沖縄尚学との1回戦で好救援を見せた習志野・飯塚脩人のマウンド度胸に加え、試合の流れを変えるパワーピッチングを評価する複数球団のスカウトもいた。

 その先、「将来性」を見極めるロイヤルズ・大屋博行国際スカウトは旭川大高の183センチ右腕・能登嵩都に「投球センスがあり、球筋もいい。鍛えようがある」と熱視線を送った。また、広島商の右腕・中尾要一郎のサイドからの球のキレを高く評価し、中京学院大中京193センチ右腕・赤塚健利についても「体のバネを作るトレーニングをしたら面白い存在」と目尻を下げた。

巨人が注目した2人の強肩捕手


星稜・奥川とバッテリーを組む山瀬の評価も高い(写真=BBM)


 巨人・長谷川国利スカウト部長は2人の強肩捕手に注目した。

「星稜・山瀬(山瀬慎之助)と中京学院大中京・藤田(藤田健斗)は地肩が強い。特に山瀬は最近の中では見たことがないほどです」

 1年夏から5季連続出場の智弁和歌山・東妻純平についても長谷川スカウト部長は「試合の流れを読むことができる」と評価する。さらに、ロッテ松本尚樹球団本部長は筑陽学園・進藤勇也の素材の高さを認め「リード、ブロッキング、打撃もパンチ力があり可能性を感じた」と話している。

センスがある強豪校のショート


八戸学院光星の遊撃手・武岡は攻守走で欠点が見当たらない(写真=BBM)


【内野手】
 遊撃手に着目したのが中日中田宗男アマスカウトディレクターである。八戸学院光星・武岡龍世、作新学院・石井巧、花咲徳栄・韮沢雄也、東海大相模・遠藤成の動きを注視していた。

「強豪校でショートを任されているということで、野球センスが光る。ズバ抜けた部分はないにしても、攻守走でバランスが取れているのでドラフト対象になるということです」

 特に武岡を評価したのはヤクルト・橿渕スカウトグループデスクで「特長は欠点がないこと。チームとして重宝することになる」と話した。智弁和歌山で捕手の東妻とともに、1年夏から5季連続出場の黒川史陽西川晋太郎の大舞台での経験値とプレーの質の高さを評価するスカウトもいた。

長打が魅力の履正社の打者


履正社・井上の弾道は群を抜く質の高さだ(写真=BBM)


【外野手】
 右のスラッガーとして履正社・井上広大の長打力は魅力だ。巨人・長谷川スカウト部長は「どこにでも放り込める。外野フライの高さが違う」と長距離砲としての素材に魅力を感じている。

 ロイヤルズ・大屋国際スカウトは、霞ケ浦との1回戦で2本塁打を放った履正社・桃谷惟吹のスイングスピードに注目。「変化球も打てるということは、最後までボールが見られるという証拠。ガツーンと、思い切りの良さに期待感が出てきます」と話した。

来年以降の有力候補


【2年生以下】
 ロッテ・松本球団本部長は左打者の明石商・来田涼斗と右打者の花咲徳栄・井上朋也について「パワーに加えて、スピードもある。来年の上位候補」とその素材にほれ込む。巨人・長谷川スカウト部長も「明石商・中森(俊介)は体全体に張りがあって、全球全力ではなく、その先を見据えた投球ができる。来田は野球を本当に楽しそうにやっている。良い姿勢だと思います」と語った。長谷川スカウト部長は母校・東海大相模の鵜沼魁斗山村崇嘉西川僚祐にも大きな期待を寄せた。

 ロイヤルズ・大屋国際スカウトは敦賀気比の右腕・笠島尚樹の身体能力が気になった様子で「全身がバネのようで、ボールが生きている」と驚きの声を上げた。

 1年生では「仙台育英の左腕・笹倉(笹倉世凪)と右腕・伊藤(伊藤樹)は野球センスが高い」(巨人・長谷川スカウト部長)と、早くも2年後を見据えた発言も聞かれた。

文◎岡本朋祐(週刊ベースボール編集部アマチュア野球班)
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