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東映・大下弘監督、やっぱり、ほんとに休養?/週ベ回顧

 

 昨年、創刊60周年を迎えた『週刊ベースボール』。現在、(平日だけ)1日に1冊ずつバックナンバーを紹介する連載を進行中。いつまで続くかは担当者の健康と気力、さらには読者の皆さんの反応次第。できれば末永くお付き合いいただきたい。

東映ナインの新喜劇?


表紙は中日江藤慎一


 今回は『1968年8月26日号』。定価は60円。

 8月4日、東京球場の三階ゴンドラ席で突然、東映・田沢代表から大下弘監督の休養と飯島滋弥コーチの代理監督が発表された。

 田沢代表は「けさ突然でしたが、大下監督から休養の申し出があり、球団としては慎重に検討した結果、大下監督の意思があまりに堅いので、この申し出を受理。飯島コーチに代理監督として本日の東京戦が指揮を執ってもらうことにしました」と語った。
 もちろん、これは表向き。

 実際には、前日8対15で10連敗を喫した後、田沢代表が報道陣をまいたうえで大下監督を六本木のレストランに呼び出して引導を渡し、休養届を出させたらしい。

 東映・大川博オーナーは軽井沢の別荘で療養中で出来事。面倒なことは部下にやらせ、自分は姿を消したほうがいいという判断だったか……。

 東映は、ここまで30勝46敗4分で最下位。観客数も激減傾向にあり、東映球団の不振が本業の映画への悪影響になると、地方の映画興行主から突き上げがあったという。
 さらに東映本社内では反大川勢力が力を持ち始め、それに屈した形で大川オーナーは、息子の毅専務を非常勤取締役に格下げするなどしていた。

 話が前後するが、球宴時、「親というのは、死んでから初めてありがたさが分かるものですねえ」と、もちろんジョークで水原茂前監督時代はよかった、という話をした張本勲の話もあった。

 チームの低迷もあって、この談話が大川オーナーを怒らせ、「監督・コーチ対選手、選手相互の間のだらけたムードが連敗の原因であることが分かった。その最大のガンは張本だ!」となった。

 これを聞いた張本は、
「オレは今まで他球団の誰にも負けない成績を残して頑張ってきた。誰にも後ろ指をさされるようなことをしたつもりはない。それがなんで連敗をオレのせいにするんだ」
 と憤り、なんと大下監督はじめ、レギュラー全員を集めたという。
 そこで、
「オレが悪いとしたら、どこが悪いのかはっきり言ってくれ。お願いだ!」
 と訴えた。

 ここでは「いや、ハリ、そんなことはないぞ」となって抱き合うのが、もしかしたら巨人かもしれないが、東映ではそうはならない。

 守備面で構えがないからスタートが遅い、カバーリングが悪い、個人記録を追い過ぎる、など言いたい放題になったらしい。
 当初は神妙に聞いていた張本だが、最後は、
「確かに俺は思い当たるようなプレーをしたかもしれん。だが、これらのことはだれだって大なり小なりやっているじゃないか。納得いかん」 
 と言い残し、部屋に戻ってしまったという。
 この鉄板の流れは吉本新喜劇、いや、東映新喜劇か。

 東京・榎本喜八がバットで殴られた話は書いたが、その犯人が近鉄の荒川俊三と分かった。入団2年目、20歳の選手というから驚きだ。
 8月2日、荒川は東京球場に榎本を訪ね、謝罪した。

 では、また月曜日に。
 
<次回に続く>

写真=BBM
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