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編集部員コラム「Every Day BASEBALL」

敵地での日韓戦。高校日本代表が負けて得た“財産”

 

韓国で行われたU-18ワールドカップ。日本はアウエーの「日韓戦」で国際大会の洗礼を受けた


 過去の取材現場における「日韓戦」で最も記憶に残っているのが、1999年のシドニー五輪アジア予選だ。韓国プロ野球の本拠地としても使われる蚕室球場(ソウル)は、内・外野とも超満員の観衆で埋まった。

 4カ国・地域で「2枠」が争われた予選。すでに日本、韓国とも2勝(対中国、チャイニーズ・タイペイ)を挙げ、本大会出場が決定していた。直接対決は「消化試合」だったが、日韓戦はやはり「別もの」である。まさしく「完全アウエー」で、地元ファンの熱狂はものすごかった。史上初、プロアマ合同チームを編成した日本は逆転負け(3対5)。外野飛球を落球する手痛いミスが失点の原因。あの異様なムードで、平常心では戦えない国際大会の怖さを知った試合だった。

 今回のU-18ワールドカップは韓国開催(釜山郊外の機張郡)だった。日本はスーパーラウンドで韓国と対決。韓国は負ければ事実上、メダル獲得が絶望視される一戦であり、相当な覚悟で挑んできた。一方、日本は初の世界一を目指すにあたり、決勝進出へ落とせない試合だった。

 今大会の試合会場となった「Gijang-Hyundai Motors Dream Ballpark(キジャン ヒュンダイ ドリームパーク)」は広大な敷地内に4面。しかし、メーン球場のネット裏の客席は3段ほどしかなく、日本で言えば、大学や社会人の練習場といった小規模の球場だった(内野、外野にはそれぞれスタンドはあるが、日本で言う公営球場とは程遠い構造)。

 とはいえ、日韓戦には多くの地元ファンが詰めかけた。試合中は「テーハミング」のコールがあちこちから巻き起こったが、1999年のアジア予選に比べれば、まったく威圧感はなかった。しかし、高校球児にとっては初めての雰囲気であり、次第に相手ペースへとのみ込まれてしまった。

 2対2でタイブレーク(無死一、二塁からの継続打順)に入った10回表、日本は2点を勝ち越した。しかし、その裏、バント処理ミスで失点して1点差とされ、ピンチを広げると、押し出し四球と中犠飛でサヨナラ負け。

 振り返れば、日本の2点リードで迎えた8回裏二死二、三塁では、打ち取った三ゴロも、一塁悪送球により2人の生還を許している。失点はすべて守りのミス。つまり、日本は「自滅」で惜敗した。マスクをかぶった水上桂(明石商高)は試合後に言った。

「(10回裏の)先頭打者で(一死)二、三塁の場面を作れなくて……相手の応援にのまれた。初めての緊張感だった」

 5万人近い甲子園の大観衆でのプレーを経験していながらもやはり、日の丸を背負うプレッシャーとは比べ物にならない。日本チームはいつも、この独特な空気感になかなか順応できないように思える。いくら練習量をこなしても、克服できるものでもないようだ。国際大会の洗礼――。実際にこの場に立って、味わうしか方法はない。

 日本はナイトゲームだった韓国戦での黒星が尾を引き、翌日のデーゲームのオーストラリア戦も落とし、屈辱の5位で大会を終えた。しかし、負けて得られる財産もある。

 敵地での日韓戦。お金を払っても経験できない、究極のステージだ。大船渡高・佐々木朗希は「機会があれば(日の丸のユニフォームを)着たいと思います」と語った。逆境の中で力を発揮できてこそ「本物」と、痛感したはずだ。20人の高校日本代表にとって今回は苦い思い出となったが、この先の野球人生における「糧」となったのは間違いない。

文=岡本朋祐 写真=高原由佳
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