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プロ野球20世紀の男たち

皆川睦男、村上雅則、江本孟紀、山内新一……&佐藤道郎「南海黄金時代、そして最後の優勝を呼んだ投手陣」/プロ野球20世紀の男たち

 

プロ野球が産声を上げ、当初は“職業野球”と蔑まれながらも、やがて人気スポーツとして不動の地位を獲得した20世紀。躍動した男たちの姿を通して、その軌跡を振り返る。

15年目に“最後の30勝”を挙げた皆川


南海・皆川睦男


 南海の黄金時代については、鶴岡一人監督と“100万ドルの内野陣”を紹介した際に触れたが、その1950年代の前半は、投手陣も充実していた。47年に26歳で入団した中谷信夫、シベリア抑留から生還して48年に27歳で入団した柚木進ら左腕が2人。柚木は南海が2リーグ制となって初のリーグ優勝を果たした51年から2年連続で最優秀防御率、52年にはMVPにも輝いた。

 ただ、51年だけは他のシーズンと違って規定投球回ではなく、資格投球回数算定法によって南海は164イニングとなり、それに到達していたことによるタイトル。だが、規定投球回で計算した“最優秀防御率”も南海の投手で、155イニングで防御率2.03をマークした右腕の服部武夫だった。

 右腕では、その51年にチーム最多の24勝を挙げたのが速球派の江藤正。49年に入団する際、大阪駅で阪神との間に“争奪戦”が勃発、その前にも後にも選手の争奪戦は繰り広げられているが、実際に身柄を巡って奪い合いが起きたのは、この江藤が唯一だ。翌52年にはアンダースローの大神武俊が入団。西鉄に王座を奪われた54年に入団した皆川睦男(睦雄)は、アンダースローに転向したのは初勝利を挙げた3年目の56年だった。

 やはり54年がルーキーイヤーで、いきなり26勝、防御率1.58で最多勝、最優秀防御率の投手2冠、新人王に輝き、以降2年連続で最多勝となって55年の王座奪還に貢献したのが宅和本司だ。快速球を武器に、ライバルの西鉄に強かった右腕だが、皆川とは対照的に3年目からは故障に苦しめられる。

 皆川は56年、野村克也という“愛妻”を得たこともあって、初の2ケタ11勝。加えて、あるチームの下位打線に投げていたとき、3ボール、ノーストライクから「どうせ打たんだろう」とド真ん中に棒球を投げ、打者も見送ったが、ボールと判定されたことがあった。もちろん抗議したが、名物審判としても知られる球審の二出川延明は「気持ちが入っていないからボールだ」と一喝。以降、“一球入魂”を座右の銘に、息の長い活躍を続ける。

 多彩な変化球が武器だったが、左打者への対策として編み出したのが詰まらせるための内角への変化が小さいスライダーで、当時は“インスラ”と言われていたが、野村に言わせれば「カットボールの元祖」。15年目の68年には初めて20勝を突破し、最終的には自己最多の31勝、防御率1.61で投手2冠に輝いた。これが現時点ではプロ野球の歴史における最後の30勝でもある。

“再生工場”のスターターとリリーフエース


南海・江本孟紀


 60年代の南海は61年にリーグ優勝、64年からは3連覇。64年は阪神を破って日本一にもなっているが、その64年に日本人として初めてメジャーのマウンドに立ったのが左サイドスローの村上雅則だった。V3の66年に復帰して、メジャー同様リリーフを中心に投げまくったが、期待が大き過ぎたことで不評を買うことに。真価を発揮したのは先発が増えた68年で、12連勝を含む18勝。皆川のキャリアハイでもあるシーズンだが、南海は1ゲーム差で阪急のリーグ連覇を許している。

 野村が兼任監督を務めていた73年が南海にとって最後の美酒となった。このときの投手陣で、生え抜きでは右腕の西岡三四郎が12勝を挙げたが、移籍してきた投手たちが大きく貢献した優勝でもあった。東映ではゼロ勝で、南海へ移籍した72年に初勝利を挙げた右腕の江本孟紀が12勝、リーグ5位の防御率2.74。やはり巨人ではゼロ勝で、移籍1年目となった73年にプロ初勝利を含む7勝、リーグ8位の防御率2.87とブレークしたのが右腕の松原明夫だった。チーム最多の20勝を挙げたのは、やはり巨人から移籍してきたばかりの山内新一だ。

 そんなスターター陣を支えたのが佐藤道郎。1年目からリリーバーとして18勝、規定投球回にも到達して防御率2.05で最優秀防御率、新人王に輝いた右腕で、この73年もリーグ最多の60試合に登板して11勝を挙げている。

 そして、もう1人。初の日本一に導いたサブマリンについては、明日、詳述する。

写真=BBM
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