昨年、創刊60周年を迎えた『週刊ベースボール』。現在、(平日だけ)1日に1冊ずつバックナンバーを紹介する連載を進行中。いつまで続くかは担当者の健康と気力、さらには読者の皆さんの反応次第。できれば末永くお付き合いいただきたい。 三原采配もズバズバ的中
今回は『1969年6月23日号』。定価は60円。
試合後、西京極球場で大合唱が起こった。
「勝った、勝った、また勝った。負けてもよいのにまた勝った」
6月1日、東映戦に勝利し、近鉄の連勝はついに12となった。
開幕当初の9連敗もあって、5月1日時点では4勝11敗の最下位だったが、いまや22勝14敗2分で2位まで上がった。
「電車は最高、野球は最低」とヤジられ、負けてばかりで「地下鉄」とも言われた近鉄だが、確実に球場のムードも変わってきた。
評論家は「小粒。この選手の顔ぶれでは長続きはしない」というが、
三原脩監督は「野球は顔や名前でするものじゃないでしょ」と涼しい顔。
「だれもが超一流の選手が好きです。ただ、いまのプロ野球にそんな選手はふんだんにいません。足が遅くても、守備がへたでも、バッティングがよければ超二流選手と言えます。それらの特徴の組み合わせ次第で十分使えますからね」
とも話していた。
この年、三原監督は明るさを前面に出し、若いチームを盛り上げていた。
ラッキーボーイ的存在となっていた、ちびっこ捕手・
岩木康郎に対しては「孝行息子」、一塁の
ジムタイルが本塁打の走塁中に故障し離脱後、穴を埋めた
小川亨には「一種の天才」、
伊勢孝夫には「お伊勢、伊勢大明神」とキャッチフレーズ的な形容をしながらおだてた。
ただ、これもチーム状態がよかったこと、さらには三原監督の体調が珍しくいいこともある。
三原は慢性の糖尿病があり、ひどくなると采配に根気がなくなると言われていた。
三原自身も、
「試合に勝つから調子がいいのか、それとも体の調子がいいから采配がズバリ、ズバリ的中するのか、その結論は簡単に出ませんな」
と話していた。
では、また月曜に。
<次回に続く>
写真=BBM