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スカウトが語るドラフト指名を受けた捕手2人の素質の高さとは?【明治神宮大会】

 

慶大・郡司は仙台育英高3年夏に甲子園準優勝。中日からドラフト4位指名を受けた(左は城西国際大との明治神宮大会準決勝で先発した3年生右腕・木澤尚文


 秋の「大学日本一」を決める明治神宮野球大会。11月19日は準決勝2試合が行われたが、10月17日のドラフト会議で指名を受けた2人の捕手は、明暗を分けている。

 慶大・郡司裕也(4年・仙台育英高)と東海大・海野隆司(4年・関西高)。ともに、打順も四番とチームの大黒柱である。ドラフトで郡司は中日4位、海野はソフトバンクから2位指名を受けている。

 慶大は城西国際大に6対1と快勝した。郡司は4打数無安打。守りでは2対0とリードした4回表に2つの暴投が絡み、適時二塁打で1点差とされたが、同点は許さなかった。最少失点にしのぐのが、郡司の真骨頂だ。このシーンを見届けた中日・近藤真市スカウトはあらためて、素質の高さを語っている。

「バタバタすることもなく、投手に対しての切り替えもできていました。うまく間(ま)を取ることもできる。これは、コーチが教えてできる技術ではないんです。リード面も1球、1球に意図を感じます。スローイングにも正確性があり、投手とのクイックの共同作業ができれば十分、勝負できるでしょう」

 郡司は今秋、東京六大学リーグで戦後14人目の三冠王と、打撃面にも定評がある。

「引っ張りができ、おっつけて逆方向に大きいのも打て、状況に応じた打撃ができる」

 すでに、心はドラゴンズの一員だ。

「若い投手が多いので、意見交換や、引っ張っていくこともできる。ウチにとっては、すべてがプラス。ドラフトは戦略的なものもありますが、よく4位で残っていたと思います」

大学日本代表の正捕手である東海大・海野はソフトバンクからドラフト2位指名を受けた。強肩で、試合の流れを変えられるのが武器だ


 一方、東海大は関大との準決勝で延長10回タイブレークの末に惜敗(7対8)。6月の大学選手権に続き、4強で姿を消している。今大会、153キロ右腕・山崎伊織(3年・明石商高)が右ヒジの違和感により登板回避。

 エース不在という厳しい戦いが続き、3試合で19失点と、リードする捕手としては苦労が多かった。だが、ソフトバンク・荒金久雄スカウトは修羅場を経験した「成長」を語る。

「粘り強くリードしていた。1回戦、2回戦と苦しい展開でしたが、ゲームを勝たせる捕手。今日の準決勝を含め、リーグ戦とは異なる状況で、もうワンランク、ステップアップしたと思います」

 海野と言えば強肩。ドラフト後は「海(かい)キャノン」と呼ばれている。この試合も4回無死一塁からのバント処理で、二塁へ矢のような送球で楽々、「2-6-3」の併殺を完成させている。荒金スカウトは続ける。

「潜在的に投げるのが上手なんです。常に(飛び出した走者を)狙っている。何かあったら、行ったろう、と。自信がないとできない。最大の長所です。それに加えて、今大会の献身的なリード。全国大会、国際大会と経験値が高い。プロの公式戦に放り込んだら、どこまでできるのか、楽しみな部分があります」

 海野は昨年から2年間、大学日本代表の正捕手を務めた。対する郡司は今年、初の侍ジャパン大学代表入りを果たしたものの、マスクをかぶる機会は限定され、悔しい思いをした。慶大は11月20日、関大との決勝を控える。主将・郡司としては、優勝しなければならない2つの目的がある。大学4年間、育ててもらった慶大・大久保秀昭監督(今秋限りで退任)への恩返し。そして、個人的には「大学日本一捕手」を証明する頂上決戦の場でもある。

文=岡本朋祐 写真=菅原淳
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