昨年、創刊60周年を迎えた『週刊ベースボール』。現在、(平日だけ)1日に1冊ずつバックナンバーを紹介する連載を進行中。いつまで続くかは担当者の健康と気力、さらには読者の皆さんの反応次第。できれば末永くお付き合いいただきたい。 スタルヒン2世登場
今回は『1969年9月1日号』。定価は70円。
8月12日、巨人・
王貞治が打撃三冠でトップに立ったが、そのわずか2日後、3つとも抜き去ったのが、アトムズのロバーツ。さすがにセの投手も警戒し、内角攻めが増えてきたが、
「どんなボールを投げられても仕方がない。でもいい調子だからドンドン打てる」
と笑顔で語っていた。
かつて阪急・
スペンサーがホームラン王にひた走った際、パの投手たちが一斉に敬遠攻めに出たが、これは日ごろからラフプレーが目立ち、嫌われていたこともある。
対してロバーツは明るく、マジメ。キング牧師が暗殺された際は、打ちしおれて「試合に出たくない」と言っていた繊細な男でもあった。
このロバーツと入団したばかりのチャンスの小話。
遠征に出発する際、東京駅でチャンスがロバーツをお茶に誘った。
「もう列車が出発の時間だよ」
というロバーツに、
チャンスは、
「どうせ、列車なんてものは時間表通りに発車するわけがない。クソ暑い中、待っているなんてバカバカしいよ」
と答えた。
そこからロバーツが必死に「日本の列車は時間通りに発着するから急ごう」と説得。実際、定刻数分前に「ひかり号」が姿を現すと、チャンスは本気でびっくりしていた。
夏の甲子園真っ只中。青森・三沢高の
太田幸司が「
スタルヒン2世」と話題になっていた。ロシア人の血を引く甘いマスクで女性ファンが急増。1日のファンレターは100通以上という。
人気だけではない。速球を主体の本格派でプロのスカウトから注目されていた。
「村山さん(実。
阪神)のようにダイナミックに、決して逃げたりせず、堂々と真っ正面から勝負する、そういう投手になりたい」
では、また月曜に。
<次回に続く>
写真=BBM