昨年、創刊60周年を迎えた『週刊ベースボール』。現在、(平日だけ)1日に1冊ずつバックナンバーを紹介する連載を進行中。いつまで続くかは担当者の健康と気力、さらには読者の皆さんの反応次第。できれば末永くお付き合いいただきたい。 移籍戦線混乱?
今回は『1969年12月1日号』。定価は70円。
ストーブリーグ真っ只中だが、この年は少し空気が違う。
トレードで誰かが出されるという話が流れると、みな、
「へえ、あいつも八百長やってたんだ」
となっていたらしい。
これは球団関係者も同じで、トレードを成立させて選手を取っても、その選手が八百長選手だったら大損害となる。セの理事会では「トレード要員はリーグが一括してまとめ、身辺調査をしてから配分したら」など、冗談とも本気ともつかぬ発言があった。
八百長問題とは別に、今回の移籍戦線の目玉と言われるのが、
中日・
江藤慎一。シーズン後半に首脳陣批判を口にし、
水原茂監督に嫌われてしまったからだ。
巨人が動くのでは、と言われていた。
鶴岡一人に監督就任を断られた
阪神。
後藤次男監督の続投かと思われたが、なんと
村山実の兼任監督を発表した。西鉄・
稲尾和久、南海・
野村克也ら青年監督ブームに乗ったか。
11月12日、球団からではなく、友人からこの話を聞いた後藤は、
「そうか。まあ1年契約だったので任期満了にともなう退団ということになるか。まあ、俺以上に吉田の心中は複雑だろう」
とホトケのクマさんらしく話した。
内野手の
吉田義男、投手の村山実は阪神における二大派閥の長だ。将来的にはいずれも監督になると目されていたが、順番は年上に吉田からだろう、と言われていた。
村山自身も、
「もし後藤さんが辞めたら後継者は吉田さんですよ。俺はまだ2、3年投げてみたいし、その自信もあるんや」
と話していた。
今回の決定は野田オーナーの強い希望だったらしいが、吉田は、
「社長から協力してやってほしいと言われたが、考えさせてくれと答えた。いますべての面で転機を迎えている。自分の取る道を、いまこそはっきり決めなければならない」
と語り、このまま退団するのでは、と言われていた。
ドラフトが近づく。今回の目玉は早大の
谷沢健一、
荒川堯、三沢高の
太田幸司。
荒川は「どのチームでやりたいか」という質問に対し、
「自分の好きな球団に入れなかったら1年間遊ぶつもりでいます。入りたい球団ははっきりは言えません」
と答えていた。
では、またあした。
<次回に続く>
写真=BBM