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ベースボールゼミナール

パ・リーグのピッチャーのほうがボールが強いのはなぜ?/元阪神・藪恵壹に聞く

 

読者からの質問にプロフェッショナルが答える「ベースボールゼミナール」。今回は投手編。回答者はメジャー・リーグも経験した、元阪神ほかの藪恵壹氏だ。

Q.近年、交流戦でも、日本シリーズでもパ・リーグがセ・リーグを圧倒しています。特にピッチャーのボールの強さについて話題になることが多いのですが、どういうことでしょうか。また、パ・リーグのピッチャーのボールのほうが強くなる理由は何ですか。(山梨県・29歳)



A.バッテリーの攻め方、考え方の違いが一番大きい。短期決戦ではパの攻め方にセが慣れないうちに終わってしまう


パ・リーグのベストナイン投手の千賀滉大ソフトバンク


 確かに、ファンの方から見るとそのように映るのかもしれませんね。交流戦でも、日本シリーズでも「ボールの強さに圧倒されている」ような表現を目にしますが、大元をたどれば攻め方の違いからきていることです。セに比較してパのピッチャー(というよりもバッテリー)は速球で勝負しようという形が多く、そのような攻めに慣れていないセのバッターが戸惑っている、と見ることができると思います。交流戦や日本シリーズのような短期での対戦では、慣れない攻めに対応しようとしている間に終わってしまいます。

 パの野球というのは、速球系(ファストボール系の変化球を含む)のボールに対し、バッターがフルスイングで応えるもので、「相手よりもちょっとでも上回ろう」とする、そのせめぎ合いに慣れています。一方でセのピッチャー(バッテリー)は変化球を交えて勝負することが多いですが、変化球というのは速球に比較して時間があるわけですから、対処できます。それが、速球ドンドンだと、バッターも早めに対応しなければいけません。パの普通の野球にセの対応が追いつかないのです。

 実際、そういう野球を展開しますから、速いボールを投げられるポテンシャルのあるピッチャーをパの球団はドラフトなどで獲得しますし、入団後はその部分を伸ばそうとします。

 また、DHがあることで一番から九番まで抜くところがありません。これがセだと、九番にピッチャーが入り、八番に打力のないキャッチャーだと、極端な話、八、九で力をセーブすることができてしまいます。彼らが3打席ずつ立つとすると、1試合で6アウト、つまり2イニング分です。その2イニング分(パも打てるキャッチャーは少ないですが……)、抜かずに全力で投げるパとセでは、1年間を通してみると、能力的にレベルアップできるのはパだと考えることができます。その部分をセのピッチャーがどう考えるかですが、だからと言ってリーグの特徴を失うような両リーグDH制には私は反対です。

 ちなみに、短期決戦だからセがパのピッチャーに圧倒されていますが、143試合戦ったら話は変わってきます。要はその攻め方に慣れているか慣れていないかの差が一番大きいのだと思います。

●藪恵壹(やぶ・けいいち)
1968年9月28日生まれ。三重県出身。和歌山・新宮高から東京経済大、朝日生命を経て94年ドラフト1位で阪神入団。05年にアスレチックス、08年にジャイアンツでプレー。10年途中に楽天に入団し、同年限りで現役引退。NPB通算成績は279試合、84勝、106敗、0S、2H、1035奪三振、防御率3.58。

『週刊ベースボール』2019年12月9日号(11月27日発売)より

写真=BBM
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