読者からの質問にプロフェッショナルが答える「ベースボールゼミナール」。今回は外野守備編。回答者は現役時代にゴールデン・グラブ賞を3回獲得した、元ソフトバンクの柴原洋氏だ。 Q.中学生を指導しています。純粋に、外野手の守備力を向上させるために良い練習方法はありますでしょうか。(東京都・44歳)
A.打撃練習時、打球捕を繰り返すことで技術は磨ける。打者の反応や音にまで注意がいくようになればなおよし
目切りを身につけることだとか、球際を強くすること、数多くのノックを受けることももちろん守備力を向上させる方法で、その段階もしっかりと踏んでいかなければなりません。しかし、ここでは質問の方のチームの選手の基礎的な技術が、ある一定レベルに達していると仮定して話をしたいと思います。
そのような選手たちのレベルをもう一段引き上げるための、もっともいい練習方法は、“打球捕”を繰り返し、繰り返し行わせることだと私は思います。打球捕というのは1カ所、2カ所、3カ所のようなフリー打撃(つまりバッティング練習です)の最中にポジションに就き、バッターが打った打球に対して守備を行う練習方法のことです(文字どおり、打球を捕るわけです)。
ノックのような一定の回転の打球ではなく、スライスしたり、フックしたり、ラインドライブがかかっていたりと、より実戦に近い打球が飛んで来るので、これを数多く受けることで打球の質にも慣れますし、例えばバッターのリアクションだったり、打球音などにも注意がいくくらい余裕が持てるようになれば、「根元だから詰まった打球で前だ」とか、「芯を食ったから伸びてくる」のように、実際に飛んでくる打球以外からも情報を収集して落下点を予想したり、いち早く一歩目を切ることができるようになっていきます。
このように個々人が意識を高く持って考えて守ることでさまざまなテクニックを磨けるので、バッティング練習だからといって、ただの球拾いをしているのではもったいないでしょう。質問の方のような指導者の皆さんには、「試合のつもりで守りなさい」と選手に指示を出して守備に就かせてください。
この練習は私がプロになった後も、大切に考えて取り組んでいて、たとえばペナントレース中もフリー打撃が行われている中で(ノーマルなノックも打ってもらいますが)、実際にバッターが打つ打球を追いかけることもありました。敵地だったり、地方球場での開催の際にはポジションからの見え方や、二塁や三塁ベースの見え方も異なってきますから、スローイングまでつけて確認をしていました。屋外だと風のチェックの必要もありますね。これらはあくまでもプロでの話ですが、感覚を研ぎ澄ますという意味でも打球捕はおすすめです。
●柴原洋(しばはら・ひろし)
1974年5月23日生まれ。福岡県出身。北九州高から九州共立大を経て97年ドラフト3位でダイエー(現ソフトバンク)入団。11年現役引退。現役生活15年の通算成績は1452試合出場、打率.282、54本塁打、463打点、85盗塁。
写真=BBM