一昨年、創刊60周年を迎えた『週刊ベースボール』。現在、(平日だけ)1日に1冊ずつバックナンバーを紹介する連載を進行中。いつまで続くかは担当者の健康と気力、さらには読者の皆さんの反応次第。できれば末永くお付き合いいただきたい。 ロッテのMVPは誰に?
今回は『1970年9月28日号』。定価は80円。
17勝12敗、防御率2.21の
阪神・
江夏豊の評判がよろしくない。
9月2日、甲子園の
ヤクルト戦(甲子園)で3回KOを食らった際、
「もう早いことペナントレース終わらんかな。シーズンオフになったらいいのにな」
と投げやりな発言。さらに、
「はっきり言って、ワシが勝利投手になるのを喜ばん者がチームにいるんや」
と言った。これには阪神・
村山実監督も激怒。
「当分、江夏をローテーションから外す」
と一度は言ったが、6日の
広島戦に最後のチャンスとばかり先発させると完封してしまった。
試合後、マスコミの質問に対する答えは1つだけ。
「なんやかんやとたたかれたから一生懸命やっただけや」
冷戦状態になっていたマスコミには「今後いっさい協力しない」と宣告していたらしい。
南海では新人・
佐藤道郎がリリーフメーンながら13勝4敗、防御率1.75で新人王候補の最右翼と言われているが、なかなかの強心臓で、
野村克也監督に「先発させてほしい」と直訴したという。
このときは野村監督にこう言われた。
「いまお前を先発で使ってみろ。9回持たんぞ。ワシは監督や。お前の力はワシが一番知ってるんや」
一応、引き下がったらしい。
当時はまだセーブ制度がなかった。
いつも疑問に思うが、野村南海の抑え第1号は間違いなく佐藤。のちの話になるが、江夏豊が1号というわけではない。
ほぼ優勝決定と言われるパの
ロッテでは、誰はMVPか話題になっていた。
9月10日時点で、
成田文男21勝8敗、
木樽正明18勝7敗、
小山正明13勝9敗、
アルトマン打率.334、26本塁打、64打点らが候補で挙がっていた。
大穴は東映の
張本勲。ただし、打率4割を達成したら、と言われていた。
死球を側頭部に受けた阪神・
田淵幸一の続報。小さな血腫が頭部にあり、また脳が少しはれているようだが、手術の必要はなく、後遺症も出ないだろう、ということだ。
また、死球前後の記憶はなく、9月7日現在ではまだ自力で立ち上がれないという。この事故、当時の雑誌ではそれほど深刻に書いていないが、実際はかなりやばかったのではないだろうか。
今季はほぼ絶望。村山実監督は来季の起用について「しばらくファーストを守らせようと思っている」と話していた。
では、また火曜日に。
<次回に続く>
写真=BBM