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「熱男!リレー」で思い出すソフトバンク・松田宣浩の原点

 

ソフトバンク松田宣浩は、亜大で東都大学通算15本塁打。公式記録としては、4年間8シーズンのうち、6シーズンの成績である


 さすが日本プロ野球界を代表する“エンターテイナー”である。新型コロナウイルスの感染拡大により、閉塞感が漂う状況下でも、明るい話題を発信している。

 ソフトバンク・松田宣浩がインスタグラムで開始した「熱男!リレー」だ。球界内にとどまらず、ほかの業界にも拡散しており、一つのムーブメントを起こしている。

 底抜けの明るさ。そして、すべての人をハッピーさせてくれるファンサービス。侍ジャパントップチームにおいても、ベンチに欠かせないムードメーカーである。

 唯一無二のキャラクターを作り上げた原点は、亜大での4年間にある。

 東都大学リーグ戦で1年春に2本塁打を放つと、以降も1、2、6、1、3本と着実に数字を積み重ね、3年秋までに歴代5位タイの15本塁打。青学大・井口資仁(当時・忠仁、現ロッテ監督)の持つ24本塁打のリーグ記録更新を視界に入れていた。

 しかし、4年春。さまざまな事情で、チームとしてリーグ戦出場ができなくなり、二部へ降格となった。東都の公式記録は一部のみで、二部はカウントされない。大学4年間で8シーズンあるうち、1シーズンは戦えず、残るラストシーズンは二部。つまり、通算本塁打は「15」で足踏みすることに。だが、主将として自身の思いは封印した。

「個人記録どうこうよりも、チームのほうが大事」。主将として、部員の士気を下げないよう、努めて明るく振る舞った。寮生活においては、4年生が雑用を率先し、下級生が過ごしやすい生活環境を作った。同級生はもちろんのこと、後輩からも慕われた。しゃべるのが、得意なほうではない。背中でリーダーシップを発揮していたのである。

 松田の笑顔が、どれほどチームメートにとって活力となったことか……。4年秋、当時は神宮第二球場が主会場だった二部リーグで優勝を遂げると、一部最下位・中大との入れ替え戦を制して、涙の一部復帰へと導いた。主将は、後輩たちが神宮球場でプレーできる最高のバトンを渡したのである。

「天国と地獄を味わった4年間。人間的、野球人としても成長できました」

 絶望の淵から這い上がった人間は強い。どんな逆境にも、負けない。そして、思いやりを持って人と接することができる。だからこそ、今回も、何とかファンに対して、前を向いて日々を過ごしてもらいたいと「熱男!リレー」を考案したのだろう。

 数年前のことである。東京都西多摩郡にある亜大グラウンドで取材をしていると、ちょうど関東遠征中だった松田と遭遇した。恩師である亜大・生田勉監督に、あいさつへ訪れていたのだ。不思議なもので、大学時代のキリっとした「顔」に戻っていた。いつもスタジアムで見せる「熱男!」のテンションではなかった。落ち着いていた。

 毎年1月には母校で自主トレ。少年野球教室を開催するなど、その素顔は律儀な男である。野球選手として、グラウンドでしっかり結果を残した上で、ファンを喜ばせる「使命感」から出るパフォーマンス。東京、福岡など7都道府県で緊急事態宣言が発令され、先がまったく見えない新型コロナウイルス。不要不急の外出を控えなければならない昨今、「熱男!」が未来へのバトンをつなぐ救世主となるはずだ。

文=岡本朋祐 写真=BBM

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