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「危険なスライディングの禁止」で二遊間の併殺時のプレーはどう変わった?/元中日・井端弘和に聞く

 

読者からの質問にプロフェッショナルが答える「ベースボールゼミナール」。今回は内野守備編。回答者は現役時代、7度、ゴールデン・グラブ賞に輝いた、元中日ほかの井端弘和氏だ。

Q.併殺の際に二塁ベース上で走者のタックルを避けるために二遊間の選手が行うアクロバティックなスローイングが好きでしたが、あのような技術は「危険なスライディングの禁止」というルール変更で不要になっているのでしょうか。いま、二遊間の選手には併殺プレーの際のベースワーク(?)をどのように指導しているのですか?(東京都・48歳)


イラスト=横山英史


 本塁での衝突(コリジョン)を禁止するために2016年シーズンからコリジョンルールがNPBでも採用されましたが、「危険なスライディングの禁止」はその翌年の17年から採用され、「第2のコリジョンルール」などと呼ばれたこともありました。

 危険なスライディングは、走者一塁、一、二塁、満塁などで、二塁を経由する併殺プレーの際に、一塁への転送を防ぐため(併殺崩し)、ランナーが故意に二遊間の選手に接触するスライディング(※足を払い、転倒させたり、スローイングミスを誘発する)のことで、私の現役時代は守っていれば当然あるものと考えてプレーしていました。また、ランナーの立場になれば、バッターランナーが生き残れるように意識的に邪魔をしていました。

 もちろん、そこには相手にケガをさせるような意識はなく、また、守っているほうも暗黙の了解(と言っていいのか分かりませんがが)で分かっていますので、スライディングを避けるようにジャンピングスローをしたり、ベースへの入り方を工夫し、避けながら強く投げる技術を身につけました。でも、逃げる気持ちでやっていたわけではありません。向こうがつぶしにくるのなら、こちらもつぶしてやるくらいの気持ち。送球のラインを邪魔するなら、(言葉は悪いですが)ぶち当ててやろう、と。

 二塁に送球する場面では受け手側のことを考えて、ランナーがどこまで来ているのかなどを見ながら、単にベース上に投げるのではなく、余裕があれば一塁寄りに投げたり、足を払われないようにセンター寄りにずらして投げたりと考えながらプレーしていましたね。それで接触されてしまうのは技術のない証拠。昔話になってしまって嫌ですが、アマチュアでは禁止されているプレーでしたので、ある意味、併殺プレーはプロの醍醐味であり、二遊間の選手にとっては見せ場というくらいの意識でいたと思います。映像で見ても、カッコいいですよね。小、中学生では必要ないのですが、マネした方も少なくないのではないでしょうか。

 接触がなくなったことで、それらの技術や工夫は必要がなくなりました。簡単に言うと、すべてベース上だけでさばくことができるので、これほど楽なことはありません。その練習もやる必要がないわけですからね。いまはベース上に正確に、素早く、という教え。結果的に、併殺の数も増えているのではないでしょうか。

●井端弘和(いばた・ひろかず)
1975年5月12日生まれ。神奈川県出身。堀越高から亜大を経て98年ドラフト5位で中日入団。14年に巨人へ移籍し、15年限りで現役引退。内野守備走塁コーチとなり、18年まで指導。侍ジャパンでも同職を務めている。現役生活18年の通算成績は1896試合出場、打率.281、56本塁打、410打点、149盗塁。

『週刊ベースボール』2020年4月27日号(4月15日発売)より
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