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川口和久WEBコラム

広島・佐々岡真司監督は、なぜ怒ったのか/川口和久WEBコラム

 

投手の仕事は何か


床田が2ケタ勝つとカープはぐっと楽になる




 先日、広島の新監督・佐々岡真司が、左腕の床田寛樹を叱りつけたという記事を見て、びっくりした。
 俺の知っている佐々岡は絶対に怒らない。いつもニコニコと穏やかな男だった。
 そういえば、一度だけ、飲み屋で彼のボトルを勝手に飲んで怒られたが、まあ、あれも仲間うちのジョークのようなもの(だよね)。

 先発、抑え、どんな起用でも顔色一つ変えずにやっていたし、後輩ながら人間ができた男だった。
 その佐々岡がなぜ人前で怒ったのか、考えてみた。

 新聞には細かな理由は書いていなかったが、少し前、床田がしっくりしないという理由で予定投球数の半分くらいでやめた、という記事を見た。
 今回も、それに近いことがあったのかもしれない。

 同じピッチャーだから床田の状態や気持ちは分かる。
 投手というのは、投げていて、どうもしっくりこないときがある。それで、もう、これ以上投げても無意味だと思うこともある。
 でも、カープは、というか、たぶん長く先発で投げている選手は、そこではやめない。

 実際、試合で、いつも好調なわけじゃない。どうもしっくりこないな、と思いながら投げなきゃいけないことは必ずある。
 そこで「ああ、やめた」になったら、首脳陣の信頼を失い、使ってもらえないし、リリーフ投手にも迷惑がかかる。
 先発ローテを守るということは、状態が今イチなら、今イチなりのピッチングをしなきゃいけないということなんだ。
 それはもう、練習で妥協せずやり続けるしかない。
 そして、それがカープ投手陣の伝統でもあった。

 俺もそうだし、北別府学さんも大野豊さん、佐々岡もそうだった。50球でしっくりこなければ100球投げた。100球でしっくりこなければ200球投げた。
 そうしなきゃ1年間先発で投げ切るための体力や技術、メンタルが作れないからだ。

 今は2ケタいくかいかないかの勝ち星で、しかも、いい年と悪い年が交互みたいな選手が多い。
 リリーフ投手は登板が多いから1年置きでも仕方がないかもしれないけど、先発は違う。はっきり言えば、そのための練習をしてないからだけだ。
 俺はよく「投手の仕事は投げることじゃない」と言う。
 そういうとみんな「じゃあ、何ですか」と聞くけど、
 投手、プロの投手の仕事は、勝つこと、チームを勝たせることなんだ。
 今、先発が5回を3点以内に抑えたら「試合をつくった。仕事をした」と言うときがあるが、それはプロの仕事じゃない。
 会社もそうでしょ。頑張ればいいわけじゃない。結果を出さなきゃプロの仕事にはならない。

 佐々岡がどういう気持ちで怒ったのかは分からないが、たぶん、そんな感じじゃなかったのかな。

 でも、どうだろう。あの怒った佐々岡の写真を見ていたら、いい監督になるかもしれないなって思えてきた。
 今年のカープは楽しみだね。
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