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リラックスして構えるとは?【後編】/元中日・井端弘和に聞く

 

読者からの質問にプロフェッショナルが答える「ベースボールゼミナール」。今回は内野守備編。回答者は現役時代、7度、ゴールデン・グラブ賞に輝いた、元中日ほかの井端弘和氏だ。

Q.2019年シーズン中の週刊ベースボールの遊撃手特集の企画で、井端弘和さんが巨人・坂本勇人選手の守備の連続写真を解説して、「12球団で一番リラックスして構えている」ことに触れていました。リラックスすることの利点と、どのようにしたらリラックスして構えることができるのか、教えてください。(千葉県・17歳)



 前回の続きです。体に力が入ると、上半身と下半身の連動が生まれず、打球に対して立ち遅れて、捕るのもままならなくなることを解説しました。上半身と下半身の連動がなくなるとどんなことが起こるか。捕球のタイミングで上半身が固まると、足が止まり、次のステップが切りにくくなり、スローイングまでの時間が遅くなります。ショートだとこの時間のロスは致命的。イージーなゴロでもファーストで刺せなくなってしまいます。

 リラックスとは、力の抜けた状態のことで、前号では究極の理想を(極端な表現ではありますが)両腕・両肩をダランとさせてヒザの力を抜き、下半身もグラグラさせるくらいの状態でボールに対応することと説明しました。それを体感するために練習では捕球しなくていいので、上半身の力を抜いた状態でボールを追ってみる。いつもと違ったボールへの入りを感じることができるというわけです。

 まず大切なのは、どういうものが守備時における“リラックスした状態”なのかを感じることだと思います。そのために、実際に捕球をしようとして力が入ってしまうのであれば、ボールを捕らないでその感覚を染み込ませるほかありません。実際にポジションに就いて、ノックでも、打球捕(打撃練習時にポジションに就いて守ること)でもいいので、実践してみてください。

 ちなみにですが、「じゃあ、どうやったら力が抜けるのか」は感じ方も含めて人それぞれですので、そこへのアプローチは各自の方法でいいと思います。ヒントとしては、準備体操があると思います。例えば肩回し。あれをガチガチに力を入れて行う人は、まずいませんよね。脱力して行うはずです。そこからイメージを広げていくといいと思います。

 力を抜いた状態で動ける感覚を身につけたら、エラーでもいいので、脱力した状態で実際のボールに対してグラブを出してみてください。上半身をリラックスした状態で打球に入っていけると、イレギュラーなどの不測の事態にも瞬時に対応することができるはずです。足が動き、スローイングまでスムーズに行えると思います。

 どのスポーツでもリラックスは最大のテーマ。難しいですが、これができれば、技術的にもやれることの幅は広がるでしょう。

<「完」>

●井端弘和(いばた・ひろかず)
1975年5月12日生まれ。神奈川県出身。堀越高から亜大を経て98年ドラフト5位で中日入団。14年に巨人へ移籍し、15年限りで現役引退。内野守備走塁コーチとなり、18年まで指導。侍ジャパンでも同職を務めている。現役生活18年の通算成績は1896試合出場、打率.281、56本塁打、410打点、149盗塁。

『週刊ベースボール』2020年5月11日号(4月28日発売)より

写真=BBM
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