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高校野球リポート

夏の甲子園中止――裏方にも目を向けてみよう

 

夏の甲子園(全国大会)と地方大会が中止。開催断念には、さまざまな理由があった


 高校野球の主役はもちろん、野球部員だ。しかし、忘れてはならないことがある。

 日本高野連は5月20日、夏の甲子園(全国大会)と地方大会の中止を発表した。49地区の代表校を決める地方大会開催の断念の理由の一つに「運営役員、審判員の確保」とあった。

 あまり触られることのない部分ではあるが、実は大会開催における中枢部だ。

 各道府県連盟主催の大会運営は、主に学校の教職員によって構成される。新型コロナウイルスの感染拡大の影響による休校で、授業が大幅に遅れている。夏休み短縮による学業への支障は大きく、校務も多忙。その合間を縫って、今後は「代替大会」「独自大会」の実現へ向けた準備を進めていかなければならない。

 今年に限ったことではないが、ボランティアとも言える状況下で、先生方の情熱なくして大会運営は成り立たないのである。高校野球が「学校教育の一環」という大前提がある以上、運営役員も当然、校務が最優先となってくる。つまり、この緊急時では平常時の人員を確保することができないのだ。

 審判員も同様である。アンパイアで生計を立てている関係者は、皆無。各自が仕事を持っており、有給休暇などを消化して大会運営に協力している。「国難」「戦後最大の危機」とも言われる情勢で、例年どおりの流れでかかわっていくのは難しい面もあるのだろう。また、審判員にも「調整」が必要である。球児とともに、炎天下のグラウンドに立つ大変な立場だ。例年は春季大会や練習試合で、夏に向けて体を作り、ゲームに慣れていくが、今年は実戦の場がほとんどない。審判員の人員確保に加えて、熱中症などの健康管理の面でも配慮をしなくてはならない。ある審判員によれば、仮にぶっつけ本番であると、体力的な不安を抱えなければならないのが現実という。

 各都道府県連盟では、3年生最後の「区切り」となる大会開催へ尽力している。甲子園を目指す大会が消滅してしまった球児たちの思いをくめば、かける言葉もない。ただ、多くの人たちのサポートによってプレーできる場が与えられているのだと、今一度、立ち止まって考えるべき。「主役」である球児のために、多くの「裏方」が汗水を流していることを感謝する良い機会でもある。

文=岡本朋祐 写真=BBM
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