週刊ベースボールONLINE

MLB最新事情

【MLB】MLB審判も30パーセントのサラリーカット

 

選手だけでなく審判団も30パーセントの年俸カットを受け入れた。今季開幕すれば、密接するリプレーセンターでの判断を避けるため、リプレー検証がなくなり、審判の権限は大きなものになるかもしれない


 新型コロナウイルスで減収減益の中、MLB機構とアンパイアが2020年のサラリーカットについて合意した。仮に試合が行われたとしても、無観客開催だとオーナーの収益は40パーセントも減る。その分を、アンパイアにものんでもらおうというのである。

 機構側の要求は35パーセントのカット、アンパイア側は20パーセントなら受けるというもので、交渉は揉め、76人の審判の意見も分かれたが、最終的に30パーセントのカットで合意した。ちなみにMLBの審判は最高で45万ドル(約4900万円)、最低でも15万ドルの年俸をもらっている。

 もしシーズン開幕となれば、プレーされた試合数に応じて給料は支払われるが、このままキャンセルされたら、それ以上の支払いはなしとなった。アンパイアにとっては厳しい事態だが、試合のない現状ではいたしかたない。機構側が健康保険や年金についてのサポートは続けるというので受け入れたのだ。

 そしてアンパイアは、途中開幕で休みなしのダブルヘッダーなど超過密日程になっても対応し、なるべくたくさんの試合を消化できるよう協力するとした。ちなみに今、アンパイアは野球の歴史上、微妙な立場にある。長くゲームをコントロールする絶対的な存在だったが、MLBは将来的なロボットアンパイアの導入を目指し、昨季は独立リーグやマイナー・リーグで実験を進めた。昨年12月にアンパイア組合が機構側と労使交渉をしたときは、ロボットアンパイアの開発に協力することでも合意している。

 そして4月初め、新型コロナの影響の隔離によるアリゾナプランが話し合われたとき、感染の心配のないロボットアンパイア導入についても検討された。現役の審判の年齢は31歳から68歳で、選手やコーチに比べると高齢になり、感染後重症化するリスクも高いからだ。とはいえ結局今年については、もし開幕できれば、かつてのような重要な役割を担いそうだ。

 14年から、MLBではインスタントリプレーが導入されてきたが、今年は本球場以外で試合が行われる可能性もあり、そこではリプレーは使えない。加えて、ニューヨークにある狭いリプレーセンターに多くのスタッフが集まって仕事をするのは感染リスクが高い。ゆえに今季だけは、リプレーがなかった時代の絶対的なパワーを取り戻すかもしれないのである。

 さて、こうしてアンパイアにサラリーカットをのませたMLB機構だが、次は選手会にも、削減を受け入れさせたい意向だ。3月末の話し合いで、プレーした試合数によって、予定されていた年俸の均等割をもらうことで合意した。しかしながら無観客だと、チケット売上だけでなく、売店、駐車場売上などもなくなり、オーナーの収益は40パーセントも減る。だから試合数による均等割だけではなく、もっとカットさせて欲しい。一方で選手会側は、一旦話し合って決めたもので、これ以上のカットはのめないと断固たる姿勢だ。

 新型コロナウイルス禍で、それでもなんとか開幕の日を迎えて欲しいとその点では両者の思惑は一致している。しかしながら開幕してしまうと、紛争の火種が飛び出し、表面化する。新たな戦いが勃発しそうな気配なのである。

文=奥田秀樹 写真=Getty Images
週刊ベースボール編集部

週刊ベースボール編集部

週刊ベースボール編集部が今注目の選手、出来事をお届け

関連情報

みんなのコメント

  • 新着順
  • いいね順

新着 野球コラム

アクセス数ランキング

注目数ランキング