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ベースボールゼミナール

侍ジャパンはなぜシンカー系の投手に苦しんだ?/元ソフトバンク・柴原洋に聞く

 

読者からの質問にプロフェッショナルが答える「ベースボールゼミナール」。今回は打撃編。回答者は現役時代に巧打の選手として活躍した、元ソフトバンク柴原洋氏だ。

Q.昨秋のプレミア12で侍ジャパンが初めて優勝を飾りましたが、ただ、アジア勢以外の国との対戦では打線が苦しんでいたように感じます(特に1番手、2番手のピッチャーに対して)。これまで国際大会のたびに動くボールへの対応について指摘されてきましたが、今回はアメリカ戦でそうであったように、シンカー系のピッチャーに苦しんでいました。何が問題なのでしょうか。(東京都・54歳)


昨年のプレミア12で優勝した侍ジャパン(写真は稲葉監督)


 質問の方が言うように、確かに、日本代表は2009年のWBC以来、10年ぶりに世界一となりましたが、アジア勢以外の国の投手から試合序盤はなかなか点を奪うことができませんでした。

 問題は、やはり“慣れ”だと思います。「動くボールに課題がある」と分かってはいても、普段のペナントレースから数多くそのようなボールに触れる機会は得られません。日本ではまだまだフォーシームが主流で、速く動くボールを投げるピッチャーも多くありません。外国人ピッチャーは各球団に複数人ずついますが、その選手たちとは1シーズンで複数回対戦することになりますし、データも充実してきます。1度でも体感すれば、バッターはボールの軌道をイメージもしやすくなります。

 ただ、国際大会になると1打席のみの対戦になることも珍しくなく、“動くボール”といっても選手によって一人ひとり特徴は異なります。映像などのデータはあったとしても、参考程度で、初見での対応はなかなか難しい。どれだけ曲がるのか、どれだけ落ちるのか、打席に立って見て初めて感覚がつかめるようになるのです。

 序盤に点が取れないのはやはり、1番手、2番手はその国の力のあるピッチャーが務めることが多いからで、プレミア12のようなバリバリのメジャー・リーガーではなかったとしても、攻略は簡単ではないのです。フォームも変速で、ボールの出どころも見づらいですしね。条件はすべての出場国で同じではありますが、アメリカ、中南米は動くボールが当たり前。対応方法は小さいころから身についています。逆に、日本の代表クラスのピッチャーが高めに制球する力のあるフォーシームなどに彼らは苦戦します。実際、日本代表は投手力を前面に押し出して優勝しているわけですから。

 私が対戦した中では日本ハムに在籍していたウルフのツーシームがよく落ちていて、ホークスは引っ掛けさせられて苦手としていました。対応方法はゾーンを上げて、低めを捨てること。落ちずに横滑りするものだけを逆方向へ。左バッターのシンカー系の右腕への対策ですが、これは1つの対応としてはありだと思います。といっても、長いペナントだからこそ。国際大会ではやはり、いかに早く相手の特徴をとらえて、対応策を練るかがカギを握るのだと思います。

●柴原洋(しばはら・ひろし)
1974年5月23日生まれ。福岡県出身。北九州高から九州共立大を経て97年ドラフト3位でダイエー(現ソフトバンク)入団。11年現役引退。現役生活15年の通算成績は1452試合出場、打率.282、54本塁打、463打点、85盗塁。

『週刊ベースボール』2020年5月25日号(5月13日発売)より

写真=BBM
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