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チームの空気を変える慶大の1年生捕手・善波力が描く4年後の姿

 

慶大の1年生・善波力は捕手に強いこだわりを持つ。ブルペンでのコミュニケーションこそが、試合でフィードバックできる貴重な場だという


 慶大野球部は6月8日に活動を再開。リーグ戦メンバークラスのAチームでひと際、元気を出している初々しい1年生がいた。

 この日、初めてAチームで汗を流した捕手の善波力(慶應義塾高)である。昨秋まで明大を12年率いた善波達也前監督を父に持ち、尊敬する親と同じポジションである。高校時代は2年春夏の甲子園に出場し、3年時は主将を務めたリーダーシップの持ち主だ。

 2月初旬に慶大の合宿所に入寮。新型コロナウイルスの感染拡大を受け、3月末から活動自粛。慶大に入学した4月以降は「オンライン、オンデマンドの授業のみ。課題を提出したり。キャンパス? 1回も歩いていません。高校と同じ敷地内なんですが、まだ、左側(大学、高校は右)に足を踏み入れたことはありません。通常授業が始まって以降の練習の流れもよく分かりませんが、順応できるようにしていきたい」と前を向く。

 昨秋、慶大は3季ぶりのリーグ制覇。主将、捕手で四番・郡司裕也(現中日)が天皇杯奪還の原動力となった。大黒柱が抜けた正捕手の座を、昨年12月から母校を率いる堀井哲也監督は植田響介(4年・高松商高)と福井章吾(3年・大阪桐蔭高)の争いであることを明言する。善波はレギュラーの道は、まだ先となりそうだが、指揮官は「SNSを含めて、野球ノートを見ても、チーム全体を見る目がしっかりしている。意欲が伝わる、気持ちの良いプレーヤー」と期待する。善波は捕手に強いこだわりがある。活動自粛期間中、父と話す機会があり、自身を見つめ直した。

「自分のことに集中するのではなく、いかに投手に良い影響を与えられるか、広い視野で見ていく。自分でコントロールできる分野を毎日、こなしていきたい」。この日もブルペンで先輩の投球を受け、心地いいミット音を響かせていた。「日々、投手とコミュニケーションを取ることで、試合でフィードバックすることができる。ブルペンを一番大事にしている」と、父親譲りの鋭い目線で語った。

「この自粛期間、頭を整理する時間になりました。これからの4年間で何をしていくかを考えました」

 4年後の姿とは?

「チームの代表としてマスクをかぶり、リーグ優勝、日本一、早稲田に勝つ。これが慶應不変の目標です。4年間を通して、大きく成長できるように努力したい」

 どんな形でも良いので、チームの戦力になることが当面の課題だという。シートノックでは、中継プレーの難しい本塁送球を何度もキャッチし、グラウンドを盛り上げていた。「いじられ役? 歓迎です(苦笑)」。1年生・善波がチームの空気を変えようとしている。

文=岡本朋祐 写真=BBM
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