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先輩の姿を見て困難を乗り越えた慶大・関根智輝「プロになりたいです」

 

「新しい自分になればいい」


慶大・関根智輝は6月8日、ブルペンで力強い投球を披露していた


 身近に頼れる先輩がいたからこそ、幾度の困難も乗り越えることができた。

 慶大の146キロ右腕・関根智輝(4年・都立城東高)は活動自粛が明けた6月8日、ブルペンで60球を投げ込んだ。バランスの取れた投球フォームから、回転の良いストレートを投じていた。全盛期と比較し、どこまで戻ったかを問われると、苦笑いを浮かべた。

「2年春? もう、覚えていないです。戻ろうとも思っていません。進化しよう、と。新しい自分になれればいいです」

 都立の星・関根は高校2年秋、3年春の東京大会8強。3年夏の東東京大会準々決勝では帝京高を下すも、準決勝で力尽きた。難関のAO入試で慶大に入学すると、1年時に春秋で計5勝をマーク。だが、2年春の早大2回戦でアクシデントが襲う。「中で(じん帯が)切れた感じがした。ヒジが軽くなったような感覚。次の日に病院に行きました。痛かったです……」。8月にトミージョン手術を受けた。

「初めてメスを入れました。術後は38度の高熱。痛かったです。リハビリがうまく進まない時期もあり……。4カ月後にネットスローを始めましたが、(患部が)腫れてくる。走って腕を振るだけでも……。そこでアイシング。徐々にならせていく形を続けていきました」

 くじけそうになったことは、何度もある。しかし、すぐ傍にトミージョン手術を経て実戦復帰した1学年上の津留崎大成(現楽天)がいた。心強かった。津留崎はリハビリ期間、肉体改造に着手し、マッチョな体をつくり上げた。ボールの威力は故障前よりも増した。

「投げなくても、成長できるんだ!!」

 関根も先輩の姿を励みに体のメカニズム、専門知識を学んだ。「自分一人で悩むのではなく、すぐ横に答えがあったので、楽でした(苦笑)。本当、津留崎さんはお世話になりました」。

「まずはチームのために全力を尽くす」


 関根は2年秋から3年秋まで3シーズンを棒に振った。4年春までに復帰してくれればいい、と言われていた。長いリハビリを経て、3月のアメリカキャンプで実戦復帰した。ところが、同月末には新型コロナウイルスの感染拡大を受け活動自粛。リーグ戦開幕も再延期となり、神宮のマウンド復帰は遠ざかったが、このブランクを前向きにとらえている。

「オープン戦で足りないと感じた部分を、インプットする時間に費やしました。投球フォームの見直し、です。(通常練習時のように)1日1日で答えを出さなくていいので、長い目で見て深掘り。原因の原因を探りました。もともとヒジに負担のあるフォーム。体幹で出力させ、ヒジは勝手に出てくるイメージ。末端で頑張らないようにしています」

 クレバーな関根らしく、理論的に説明した。最速は2年春の146キロ。現在は144キロまで戻ったが、冒頭のように過去と比べることはない。新たな関根智輝で勝負しようとしている。

「プロになりたいです」

 卒業後の進路志望を明言した。しかし、自分だけのチームではない。「1学年上の先輩もチームのために戦った結果、プロにつながった。まずはチームのために全力を尽くすことです」。先輩の津留崎は4年秋に救援投手として11試合中8試合に救援するフル回転で、リーグ優勝に貢献。ラストアピールが実り、ドラフト3位という高評価を得た。「生きた教材」を励みに、関根も地道な努力を継続していく。

文=岡本朋祐 写真=BBM
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