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高校野球リポート

代替大会の概要を発表した神奈川高野連の切実な要請――「個人の意思を尊重してほしい」

 

神奈川県高野連は6月12日、夏の地方大会中止に伴う「代替大会」の概要を発表。今後、開催へ向けて慎重に準備を進めていく


 個人の意思を、尊重してほしい――。大会運営サイドから発信された切実な要請だった。

 神奈川県高野連は6月12日、第102回全国高等学校野球選手権神奈川大会の中止を受け、独自で開催する「代替大会」の概要を発表した。期間は8月1日〜23日。学業に支障が出ないように配慮され、参加校の夏季休業日と週休日に試合が組まれる。試合方式はトーナメントを基本としているが今後、県高野連は加盟校に出場の可否を調査。また、公認球場の確保が整い次第、大会形式を詰めていくという。最終日の23日は動かせないため、場合によっては全日程を消化できない可能性もある。

 あくまでも高校野球は「教育の一環」である。この教育的視点から、運営側が懸念しているのは、例年よりも約1カ月遅い大会スケジュールである。神奈川県高野連・栗原豊樹専務理事は言う。「7月で部活動には区切りをつけ、8月以降は受験体制にシフトする予定だった部員もいるはずです。(出場可否は)保護者としっかり、話し合ってほしいですし、自分の意思を大事にしてほしいと思います。仲間との関係もあるかと思いますが、流される形だけは、避けてほしいと願うばかりです」。

 もちろん、苦楽をともにし、一緒に汗を流してきたチームメートと最後まで活動を全うするのが理想だ。しかしながら、人生のターニングポイントである進路問題と向き合うことも必要。だからこそ、仮に「引退」を決断しても、次へのスタートに対し敬意を表す。思いやりを持った接し方を、あらためて求めたのだ。

 また、栗原専務理事が改めて、球児に訴えたのは、当たり前が当たり前ではない、という現実についてである。

「(大会の)機会は無条件に与えられるものではないということを、重く感じてほしい。各方面のさまざまな協力、理解があっての開催となります。主役である選手たちも、日常の生活から自ら対策を取って、気を引き締めて大会に臨んでほしいと思います」

 新型コロナウイルスの感染拡大を受け、日本高野連から夏の全国大会(甲子園)、地方大会の中止が発表された5月20日以降、全国の各都道府県高野連は「代替大会」「独自大会」の実施要項を発表。だが、神奈川県高野連は具体的な表明を控えてきた。神奈川県は全国的にも感染者数が多く、緊急事態宣言中は13の「特定警戒都道府県」に指定された背景もあり、慎重に協議を進めてきたのだ。

 ようやく、この日の記者会見へと至ったわけだが、スタートラインに立ったに過ぎない。県教育委員会等と相談の上、生徒の安全確保を第一に、感染リスクをゼロに近づけるための最善の準備を進めていくという。今後の情勢次第では、各校1試合になるかもしれない。しかし、大会開催へ尽力している「事実」は消えない。今さら言うまでもないが、加盟校の部員は感謝の心を忘れてはならないのだ。

文=岡本朋祐 写真=BBM
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