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ドラ1候補・早川隆久が自粛期間で突き詰めた“予祝”「経験のないリーグ制覇をして優勝パレードを」

 

日常生活から模範に


早大野球部は6月8日に活動を再開。151キロ左腕で主将・早川隆久は軽快な動きを見せた


 新型コロナウイルスの感染拡大を受け、早大野球部は3月28日以降、大学からの要請により活動自粛していたが、6月8日から通常練習を再開した。感染防止に最大限配慮しながら、夏本番に向けて、汗を流している。

 ドラフト1位候補左腕は緊急事態宣言中、どんな「おうち時間」を過ごしていたのか。

 早大の151キロ左腕・早川隆久(4年・木更津総合高)は東京都西東京市内にある野球部の「安部寮」で約2カ月、自粛生活を送った。不要不急の外出禁止。外へ出るのは、寮の食事が出ない日曜夜と月曜に、近くのスーパーで弁当を購入するだけだった。大学はオンライン授業。朝8時の点呼から、夜10時に就寝。エースであり、チームをけん引する主将として、日常生活から模範となってきた。

 GWが明けるまでの1カ月は安部球場、室内練習場、ウエートルームら施設が使用できなかったため、汗を流すのは安部寮の敷地内に限られた。普段はミーティングで使用している「講堂」にウエートの器材を持ち込み、屋上と中庭でも、可能な限り体を動かした。下半身強化は近所の坂道や、公園で走り込んだ。

 早川は4月中、ボールに一切触れず、体づくりに立ち返った。公共施設での硬式球のキャッチボールはリスクを伴う。ここは、割り切って、肉体改造期間としたのだ。投手によっては、指先の感覚を忘れさせたくないタイプもいるが、早川の場合はそこまで気にしない。逆に「どれだけ成長できるか楽しみ」と、前向きにトレーニングに没頭した。

「3人、2時間以内」という制限下で、グラウンド使用が許可された5月以降は第2段階へ。投球フォームを修正し、シャドーピッチングでバランスの良い形に固めた。体重80キロをキープしながらも、明らかに体が大きくなった印象。50〜60メートルの遠投で明らかな球質の進化を感じた。「力を入れなくても、頭よりも高い位置にはいかない」。6月4日からはブルペン投球を再開し、手ごたえを得ている。

 春のリーグ戦は開幕が再延期となり、8月中旬を予定している。各校1試合総当たりの5試合制という「短期決戦」だ。1日3試合が組まれる可能性もある。「朝、昼、夕方で、動きやすい時間帯はどこなのか、1週間ずつ分けて試してきました」。最も筋肉が反応しづらいのは朝であると判明し、体の機能を活性化させるための工夫を重ねた。どんな試合スケジュールになっても、ベストパフォーマンスを発揮できる準備を整えている。

「自分としては良い時間でした」


 脳も動かす。早川は読書が趣味。特に自己啓発本を読んで、自身と向き合う時間が好きだという。今回の自粛期間中は「予祝」について突き詰め、モチベーションを高めて行動に移した。「大学入学以来、経験のないリーグ制覇をして優勝パレードをしたい――。そのシーンを想像すると、やってやろうという気持ちになる。そこで、勝つためには何ができるかを考えるんです」。勉強熱心である。

「自分としては良い時間でした。プラスになったと思っている。ニュース等でも見たんですが、この時間をうまく利用し、チャレンジできる人とできない人で、人間の本質が出る、と。努力する姿勢によって、差が生じる」

 夏開催の「春」を終えた1カ月後、9月19日には、秋のリーグ戦開幕が控える。「5戦全勝で優勝する。圧倒的な力を見せつけて、相手に嫌な印象を与えた中で秋を迎えたいと思います」。対外試合は7月中旬以降からを予定しており、基礎体力づくりを継続。活動自粛期間を経て、ドラフト1位候補左腕は、心身ともに着実にレベルアップしている。

文=岡本朋祐 写真=田中慎一郎
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