週刊ベースボールONLINE

ベースボールゼミナール

セーフティースクイズを成功させるコツは?/元中日・井端弘和に聞く

 

読者からの質問にプロフェッショナルが答える「ベースボールゼミナール」。今回は走塁編。回答者は現役時代、たびたび好走塁を披露した元中日ほかの井端弘和氏だ。

Q.昨秋のプレミア12のオーストラリア戦でも源田壮亮選手が成功させましたが(三塁走者は周東佑京選手)、最近、高校野球のみならずプロでもセーフティースクイズが作戦として用いられています。成功させるコツは何でしょうか。ランナー、バッター双方の立場から、教えてください。(岐阜県・28歳)


プレミア12でセーフティースクイズを決めた源田


 プレミア12のオーストラリア戦(ZOZOマリン)での源田壮亮選手(西武)のプレーは、厳密にはセーフティースクイズではありません。二死(走者三塁)から、何とか“セーフティーバント”で一塁に生きようとしてピッチャー前に転がしたところ、二死だったので三塁走者の周東佑京選手がホームに突っ込み、これにピッチャーがつられてしまった、というプレーです。ピッチャーが冷静に一塁に投げていたらどうだったか、微妙なプレーではありましたが、周東選手の足、源田選手のアイデアと足が奪った1点でした。

 話が逸れましたが、セーフティースクイズは走者が三塁にいて無死または一死で行うのがセオリーです。通常のスクイズは投手のモーションに合わせて三塁走者がギャンブル的にスタートを切り、バッターはどんなボール球だったとしてもバットに当てて転がし、三塁走者を生還させる、失敗の許されない確実に1点を奪うためのプレーです。

 一方でセーフティースクイズは三塁走者はピッチャーのモーションに合わせてスタートを切るわけではありません。バッターがストライクをバントした瞬間(バットに当たった瞬間)にスタートを切り、その後、打球を見てそのまま突っ込むのか、自重するのかを判断するので、リスクをある程度抑えて1点を奪いにいきます。ピッチャー前に転がったり、「ホーム生還は無理そうだ」と走者が判断すればホームには突っ込みませんし、小フライになった場合も同様ですね。バッターが空振りすれば、スタート自体を切らない形となります。ただ、転がってからのスタートでは遅く、ランナーはバッターのインパクトに集中しておかなければいけません。

 セーフティースクイズを成功させるコツ(理想)は、バッターが確実に一塁線に、ファーストに処理させるように転がすことです。三塁走者から見ても角度的に判断がしやすいですからね。ピッチャー前だと非常に判断がしにくいです。無理にホームを狙うプレーではないので、突っ込まない選択をすることが多くなると思います。

 ベンチの立場に立ってこの作戦を考えると、走者が単独で三塁の場合はファーストが突っ込んできやすいのでサインは出しづらいです。走者一、三塁だとけん制のためにベースに着くため、成功させやすいのではないでしょうか。

●井端弘和(いばた・ひろかず)
1975年5月12日生まれ。神奈川県出身。堀越高から亜大を経て98年ドラフト5位で中日入団。14年に巨人へ移籍し、15年限りで現役引退。内野守備走塁コーチとなり、18年まで指導。侍ジャパンでも同職を務めている。現役生活18年の通算成績は1896試合出場、打率.281、56本塁打、410打点、149盗塁。

『週刊ベースボール』2020年6月28日号増刊(6月17日発売)より

写真=BBM
週刊ベースボール編集部

週刊ベースボール編集部

週刊ベースボール編集部が今注目の選手、出来事をお届け

関連情報

みんなのコメント

  • 新着順
  • いいね順

新着 野球コラム

アクセス数ランキング

注目数ランキング