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新キャプテンの奮闘と葛藤――チームの危機に佐野恵太は何を思うか/FOR REAL - in progress -

 

優勝を目指して戦う横浜DeNAベイスターズ。その裏側では何が起こっているのか。“in progress”=“現在進行形”の名の通り、チームの真実の姿をリアルタイムで描く、もう一つの「FOR REAL」。


 メトロノームみたいに規則的に繰り返されてきた「勝」と「負」の往復は終わった。

 7月16日のドラゴンズ戦に敗れて2連敗。翌17日からの対ジャイアンツ3連戦にすべて敗れて5連敗。最後の一戦は勝利まであとアウト1つのところで同点に追いつかれ、いっきに逆転された。

 今シーズン初めて観客を横浜スタジアムに招き入れての週末だったが、負に傾いた流れを止められないまま、日曜の夜は更けた。

 敗れた試合の多くが接戦だった。

 ピンチでの粘りがあれば、ミスがなければ、あるいはチャンスでの一打があれば、結果は逆になっていた。そんな試合も多かった。

 18日、土曜日のゲームもそうだ。

 ジャイアンツの先発、A.サンチェスの前に打線が沈黙し、4点ビハインドで迎えた最終回。先頭打者からの4連打で2点を返し、なおもノーアウト一二塁。ホームランが出れば逆転サヨナラというシチュエーションが生まれた。

 打席には4番の佐野恵太。2回、自身の悪送球でジャイアンツに先制を許した。一振りで何もかもをひっくり返せるチャンスだった。

 しかし、ここから登板した左腕、中川皓太を打ち崩せない。バットを強振した佐野はセカンドフライを打ち上げ、後続も倒れた。

「キャプテンだから、4番だから打たなきゃいけないとかじゃなくて。まず野球選手として、試合に出ている一人として、ミスを取り返せるようなバッティングをしなきゃいけなかった。ぼくがあそこで打てなかったのがすべて」

 佐野は淡々とそう振り返った。

「ホームランを打ちたい」


 ただ、ひとまず個人成績だけにフォーカスするならば、開幕からの26試合、佐野は好調を保ってきたと言える。土日の2試合で1本しか安打は出なかったが、それでも打率は.357。リーグ4位だ。

 率を残せている要因について、佐野はこう考えている。

「毎日、試合が終わったあとに、その日の打撃を振り返る。そして修正して次の日を迎えるということを、いまはできているのかなって。ポイントを抑えてバッティング練習することで次の日にいい形で入れている。何が正解かはわからないけど、いまはそれで結果が出ているし、1年間通じてやっていきたい」


 ハイアベレージの一方で、ホームランはまだ1本も出ていない。そのせいもあって、佐野はいつからか“つなぎの4番”と称されることが多くなった。

「もちろん、1試合目から『ホームランを打ちたい』ってずっと思ってますよ」

 でも、と言葉を継ぐ。

「打ちたい、打ちたいっていう気持ちがバッティングを崩す要因になる。ぼくはそういうタイプなんです。そこは我慢しながら、自分の、しっかりとした強いスイングができるようにと思って打席に立っています」

 だが試合数がかさむごとに、「そろそろ一発を」との誘惑は強まる。最終回の凡退も含め4打数無安打に終わった土曜日の心理状態を、佐野はこう明かした。

「実は4打席ともホームランを狙って打席に入りました。だから……よくないですよね。ヒットが出そうなスイングもできていなかったですし、いつもと違う体の動きになってしまっていた」

 ホームランを打ちたい気持ちと、狙えば形が崩れるという現実と。その狭間で、佐野は葛藤している。

 今シーズン、全試合で4番打者を務めてきた。自分自身の打席の結果と試合の結果は直結している――そんなふうに、試合を重ねるごとに感じるようになったという。

「悔しい負け方をした試合、『今日は勝てたな』って思うような試合のあとに自分の打席を振り返ってみると、よくないことが多い。4番が、キャプテンが打たなきゃダメなんだなって思うことが何度もあった。土曜日の試合はその象徴ですよね。まだまだ試合があるし、そういう試合をなくしていかなきゃいけない」


自分の感情は1秒でも出さないように。


 勝負を決めるチャンスの打席で凡退したあと、ベンチに戻った佐野は、すぐに最前列に陣取って声を出した。キャプテンとしての自覚がそうさせた。

 佐野は言う。

「去年とかは、打てなかったり、満足いくプレーができなかったりしたら、ベンチの中でムスッとして、ロッカーでも楽しそうじゃない空気を出してしまっていたと思います。でも今年は、『みんなが見てるんだ』って思うんです。苦しいとき、打てなかったとき、チームに迷惑をかけているときの姿こそ、みんなの目に映ると思う。だから悔しさとか、そういう自分の感情は1秒でも出さないようにしているつもりです。そういう気持ちを持つことで、自分自身も成長させてもらえている」

 連敗とともに順位も落ちたいま、チームは厳しい状態にある。キャプテンとして何をすべきか。何らかのアクションを起こすべきタイミングがあるとしたらいつなのか。佐野は考えを巡らせている。

 とはいえ、筒香嘉智のあとを受けて新キャプテンになり、初めて迎えたシーズンだ。正直な思いがこぼれた。

「わからない、ですよね。いまはとにかく、チームを鼓舞して、自分自身も鼓舞して、前を向いて戦うしかないのかなと思っています。アクションを起こさなきゃいけないタイミングはこれから出てくると思う。だからチームのことを思わない瞬間が一瞬もないように。それぐらいチームのことを考えていないと、チームの雰囲気だとかいろんなことを感じ取れないと思うので。常にチームを見ながら、自分の成績もしっかり残しながら……もうガムシャラにやるしかないって感じです、いまは」


 ただ、佐野は決して独りではない。どんな悔しい敗戦のあとも、翌日のスタジアムには明るい表情を見せる仲間たちの姿がある。彼らと顔を合わせて挨拶するうち、佐野は「今日という新しい一日がまた始まるんだ」とあらためて思う。

「(土曜日の試合後は)正直、凹みました。でもやっぱり、昨日のことを引きずるのはよくない。そういうキャプテンの姿を3年間見てきましたし」

 25歳は、昨シーズンまで見つめてきた背中を思い返しながら、気丈に言った。


 2019年、春先に10連敗を喫した。

 連敗中も下を向かず、常に新しい一日と胸を張って試合に臨んだ。

 そして夏場、いっきに盛り返した。

 そのプロセスを、佐野をはじめとする選手たちは経験済みだ。勝負の世界、負けが「連続」することは避けられないが、それを「連鎖」させないことはできる。戦う選手たち一人ひとりの気持ちひとつで、鎖は断ち切れる。

 だからきっと、ベイスターズはいまの苦境を切り抜けられる。

 新たに始まる一週間。それを証明するべきときだ。



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写真=横浜DeNAベイスターズ

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