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【MLB】短縮シーズンで、18年8月のベーブ・ルースが見せた究極の二刀流

 

短縮されたシーズンで二刀流を発揮し、レッドソックスを世界一に導いたベーブ・ルース。大谷も同じような活躍が期待される



 1914年8月に始まった第一次世界大戦は、アメリカが17年4月に参戦。17年は、一部のメジャー・リーガーが志願兵として戦場に行っただけで、野球シーズンに大きな影響はなかった。

 しかし18年になると、徴兵され、多くの選手が戦場に駆り出された。社会全体も野球どころではないというムードになり、アメリカン・リーグのバン・ジョンソン会長はワールド・シリーズの中止を検討するが、オーナーたちが反対。8月2日、公式戦は9月1日で打ち切り、その時点で首位のチームがリーグ優勝となり、ワールド・シリーズに進むと決めた。当時シーズンは154試合だったが130試合に短縮された。

 8月1日までア・リーグ首位はレッドソックスで60勝37敗、2位のインディアンスが55勝43敗で5.5ゲーム差があった。しかしながら8月中旬には2ゲーム差に縮まり、気は抜けない。そこでベーブ・ルースが二刀流で信じられないペースで試合に出続けた。当時23歳と若かったとはいえ、体がよくもったものだと思う。

 投げる方は、8月は1日、4日、8日、12日、17日、20日、24日、31日に先発し、8試合中7試合に完投、6勝2敗だった。インディアンスとの直接対決は特にすごかった。4日は12イニング完投、4安打1失点で勝利。17日は9回5安打2失点で勝ったあと、中2日で20日中も登板、7回8失点と打ち込まれたが、それでも勝ちをおさめた。

 野手としても中堅や左翼で先発、当時指名打者制度はなかったから、投げた試合も打席に立った。4日、31日はダブルヘッダーで投手と、野手で1試合ずつ先発した。30日、31日は連日のダブルヘッダーで、4試合で15打席に立った。

 8月は合計24試合に打席に立ち、98打席で22安打、18四球。この月本塁打はなかったが、出塁率.418だった。18年シーズンは投手で2ケタ勝利、打者で2ケタ本塁打を同時に上げた二刀流シーズンとして有名だが、特に8月はペナント獲得のために獅子奮迅の活躍。サイ・ヤング賞投手とMVP打者の一人二役だった。ルースの踏ん張りでレッドソックスはインディアンスを2.5ゲーム差で振り切り、ワールド・シリーズに進出。9月5日からのシリーズでもけん引車で、4勝2敗で世界一に輝いている。

 今年大谷翔平は60試合の短いペナントレースを戦う。現時点ではエンゼルスは大谷を18年のように起用する意向で、週に一度の先発登板、3、4試合のDH出場となる。月に直すと、4、5試合の先発登板、75打席くらいである。とはいえマラソンではなく、短距離走となる今季、大谷が投げても打っても絶好調なら、もっと頻繁に試合に出すかもしれない。

 こんな短いシーズンは、後にも先にもないだろうし、大谷もまだ26歳と若いだけに、今年しか見られないものとして期待したいところだ。指揮官はアイデアマンのご存じジョー・マドン監督でもある。
 
 現地時間7月7日、大谷は紅白戦で22カ月ぶりの実戦登板、ストライクが入らず、3回で7四球の乱調だった。しかしながらマドン監督は「彼は時代を代表するような野球選手。辛抱して見守ればリズムを見つけ出すし、素晴らしい能力がほとばしるように出てくる」とまったく心配はしていなかった。

文=奥田秀樹 写真=Getty Images

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