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佐々木朗希のように足を高く上げる効果とメリットは?【前編】/元阪神・藪恵壹に聞く

 

読者からの質問にプロフェッショナルが答える「ベースボールゼミナール」。今回は投手編。回答者はメジャー・リーグも経験した、元阪神ほかの藪恵壹氏だ。

Q.ロッテの佐々木朗希選手のように、軸足一本で立つ時に、ものすごく足を高く上げる選手と、腰くらいまでの高さまでしか上げない選手がいます。どちらが望ましい形なのでしょうか。また、その場合のメリットなど、実際の効果を教えてください。(新潟県・16歳)



 下半身のパワーを最大限に利用することを考えれば、足を高く上げたほうがいいと私は考えています。メジャー324勝(292敗)でノーヒットノーラン7回のノーラン・ライアン(元エンゼルスほか)は、足を上げる際に「(右ピッチャーならば)左ヒザを左の肩につけろ」という指導をしています。ステップしていく側の左足を高く上げ(軸足にパワーを貯めて)、ドライブ(ステップ)して着地したときに前側の足にパワーを移していくことで、スピードボールが投げられる、ということです。

 まだまだ体の出来上がっていないロッテの佐々木朗希選手が160キロを投げられるのも、下半身をうまく使えているからでしょう。メジャー最速の169キロ(105.1マイル)を投げる左腕のチャップマン選手(ヤンキース)も、右腕のヒックス選手(カージナルス)も高く足を上げていますね。腕の力だけではこれほどのボールは投げることはできません。

 ただし、ピッチングにおいてはバランスも重要です。足を高く上げ過ぎて、真っすぐに立つことができなかったり、(右ピッチャーなら)一塁側に倒れるようにしてようやく立てても意味がありません。ドライブしていく際に体が開いたり、方向がブレて、リリースが一定ではなくなり、ボールの威力自体も落ちますし、何より制球面で問題が生じることになるでしょう。これらの問題があるので、総合的に判断をし、まず真っすぐに立つことを重視し、足を高く上げないピッチャーもいて、それが間違いであるというわけでもありません。自分でバランスが保てる中で、最も高く上げられる位置を探すことが良いのではないでしょうか。

イラスト=横山英史


 海外の選手に比較して、日本人の選手のほうが足が高く上がらないのは、プレートの使い方に問題があると思います。ワインドアップの際に、多くの日本人選手が体をホームに正対させ、ステップしていく側の足をプレートより後方に引いて、上げていく際には軸足とクロスするように移動していきます。一方で海外の選手の多くはバッターに対して斜に構え、プレートよりも前でこれらの動きを完結させるので、足を上げる直前までの動きが少なくて済みます。動きが少ないほうがバランスがとりやすく、海外の選手は足を高く上げることに集中できる、というわけです。    

<「後編」に続く>

●藪恵壹(やぶ・けいいち)
1968年9月28日生まれ。三重県出身。和歌山・新宮高から東京経済大、朝日生命を経て94年ドラフト1位で阪神入団。05年にアスレチックス、08年にジャイアンツでプレー。10年途中に楽天に入団し、同年限りで現役引退。NPB通算成績は279試合、84勝、106敗、0S、2H、1035奪三振、防御率3.58。

『週刊ベースボール』2020年7月20日号(7月8日発売)より

写真=BBM
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