週刊ベースボールONLINE

ベースボールゼミナール

佐々木朗希のように足を高く上げる効果とメリットは?【後編】/元阪神・藪恵壹に聞く

 

読者からの質問にプロフェッショナルが答える「ベースボールゼミナール」。今回は投手編。回答者はメジャー・リーグも経験した、元阪神ほかの藪恵壹氏だ。

Q.ロッテの佐々木朗希選手のように、軸足一本で立つ時に、ものすごく足を高く上げる選手と、腰くらいまでの高さまでしか上げない選手がいます。どちらが望ましい形なのでしょうか。また、その場合のメリットなど、実際の効果を教えてください。(新潟県・16歳)



 前編では下半身のパワーを最大限に利用することを考えれば、足を高く上げたほうがいいことを説明しました。とはいえ、ピッチングにおいてはバランスも重要で、真っすぐに立つことを重視し、足を高く上げないピッチャーもいて、それも正解であるともお話ししています。また、プレートの使い方も大きく関係しており、ワインドアップの際にバッターに正対して構え、プレートよりも後方に足を引くなどモーションの大きい(多くの)日本人選手と比較し、斜に構えてプレートよりも前で動きを完結させる海外の選手のほうが、バランスがとりやすく、足を高く上げることに集中できることも紹介しました。

 バランスを取るには動きが少ないほうがいいことに加え、もう1つ、「どこに重心(頭の位置)があるか」も大きくかかわってきます。足を上げて真っすぐに立ったときのことを考えてみてください。軸足の親指の上に頭があることが重要で、例えば右ピッチャーなら、これが一塁側に少し倒れても、三塁側に前のめりになってもバランスは崩れ、ここでの誤差がフォームの大きな乱れにつながり、制球面はもちろん、ボールのキレ、威力も100パーセントのものとは程遠いものとなってしまいます。バッターに正対し、ステップしていく側の足をプレートよりも後方に引くと、頭の位置も後方に引っ張られ、軸足親指の上からズレることになります(回避する方法もありますが……)。真っすぐに立つには頭の位置を戻さなければならず、これはムダな動きです。

 また、このときにちゃんと元の位置に戻すことができればいいですが、モーションを起こしているわけですから、本当に動きの中で元の位置に戻すことができるのか。これに加えて足をクロスさせて戻していく動きも同時に行わなければならず、前述した足を上げることだけに集中できる海外の選手に比較して、「しなければいけないこと」が多過ぎますし、動きの中で真っすぐに立つ(止める)ことは極めて難しい作業だと思います。

イラスト=横山英史


 ちなみに、質問にも出てくるロッテの佐々木朗希選手のフォームを思い出してください。走者なしでもセットからのスタートで、軸足の上に頭を置いた状態からスッと足を上げていきますよね。大船渡高時代からそうでした。どうしたら自分の力を余すことなくボールに伝えることができるのか、よく理解していると思います。

<「完」に続く>

●藪恵壹(やぶ・けいいち)
1968年9月28日生まれ。三重県出身。和歌山・新宮高から東京経済大、朝日生命を経て94年ドラフト1位で阪神入団。05年にアスレチックス、08年にジャイアンツでプレー。10年途中に楽天に入団し、同年限りで現役引退。NPB通算成績は279試合、84勝、106敗、0S、2H、1035奪三振、防御率3.58。

『週刊ベースボール』2020年7月27日号(7月15日発売)より

写真=BBM
週刊ベースボール編集部

週刊ベースボール編集部

週刊ベースボール編集部が今注目の選手、出来事をお届け

関連情報

みんなのコメント

  • 新着順
  • いいね順

新着 野球コラム

アクセス数ランキング

注目数ランキング