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松井秀喜、高橋由伸の陰に隠れたが…「天才打者」と評された選手とは

 


 松井秀喜高橋由伸。球界を代表する2人のスーパースターの陰に隠れていたが、巨人で不動の外野陣を形成した天才打者がいた。清水隆行だ。派手さはないが玄人好みの安打製造機で、緩急やコースに投げ分けられても体の軸がぶれずヒットゾーンに打ち返す。その打撃技術は「天才」とも評されていた。

 西武時代の2015年にNPB最多の216安打を樹立したレッズ・秋山翔吾は過去に週刊ベースボールのコラムで子どものときは松井、高橋にあこがれていたことを明かした上で、次のようにつづっている。「ただ、自分が経験を重ね、野球が分かってきて、松井さんたちは自分のプレースタイルと違うと気付いたのでしょう。そんなときに目に飛び込んできたのは同じ巨人の清水(清水隆行)さんでした。細身ですが、シャープなスイングで安打を稼ぐ。2002年に最多安打のタイトルを獲得されたときの安打数が191だったということを、いまだに覚えていますからね」。

 清水の持ち味は日本刀を振りぬくような鋭いスイングから放たれる弾丸ライナーだ。外野の間を抜く速い打球で二塁打が多く、04年はリーグトップの39二塁打をマークしている。ミート能力が高く、シーズン打率3割を5度記録。同期入団の仁志敏久とともに1年目からレギュラーに定着し、長嶋政権では「バントをしない二番打者」で1学年下の松井秀喜、2学年下の高橋由伸と球界屈指の外野陣を結成した。

 キャリアハイの活躍で輝いたのは02年。原監督第1次政権で一番を任され、打率.314、14本塁打でリーグトップの191安打と日本一に大きく貢献した。常勝を義務付けられた巨人は毎年オフに大型補強を行っていたため、清水もレギュラーを保証されていたわけではなかった。05年は新外国人のゲーブ・キャプラーが入団。タフィー・ローズが左翼に回り、清水は一塁の練習にも取り組んだが、清原和博がいたため4月は控えに回っていた。だが、キャプラーの打撃不振もあり、5月に左翼のレギュラーを奪い返して2年連続打率3割をマーク。守備は肩が強いわけではなかったため、打ち続けて存在を証明するしかない。エリート軍団で異色の存在だったが、天才的な打撃技術と逆境を跳ね返す生き様に巨人ファンの人気は高かった。

入団1年目、1996年の清水(右)と仁志


 晩年の09年は金銭トレードで移籍した西武でプレーして同年限りで現役引退。NPB通算14年間で1485試合出場、打率.289、131本塁打、488打点。1428安打は立派な数字だが、清水の力を思えばもっと打っても不思議でない。ただ、「スター軍団」の巨人で熾烈な競争を勝ち抜いて残した数字に大きな価値がある。入団した96年に最大11.5ゲーム差を逆転する「メークドラマ」を経験し、西武へ移籍する前年の08年は打撃不振で後半戦の出場機会はなかったが、チームは最大13ゲーム差をひっくり返す「メークレジェンド」でリーグ連覇を達成した。両方の年に巨人のユニフォームを着ていた選手は清水だけ。巨人ファンのみならず、プロ野球ファンの印象に残る好打者であることは間違いない。

写真=BBM
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