プロ野球選手の出身地を見ると、関西、関東、広島、九州と当然ながら人口が多く野球が盛んな地域が目立つ。だが、東北も上記の地域より人数は少ないが、球史に名を刻む投手が目立つ。岩手県出身で菊池雄星、大谷翔平、福島県出身で江川卓、遠藤一彦、宮城県出身で佐々木主浩、斎藤隆、山形県出身で皆川睦雄…。その中で個性派の選手が特に目立つのが秋田県出身の選手たちだ。秋田県人の県民性は「我が道を行く」タイプが多く、一見冷たく感じるが、義理人情に厚く郷土を大切にするという。以下の選手たちは秋田出身のスーパースターたちだ。
※石川雅規の通算成績は昨年までの数字


・落合博満（ロッテ、中日、巨人、日本ハム）
※秋田県若美町（現：男鹿市）出身
通算成績　2236試合出場　打率.311、510本塁打、1564打点

　三冠王を3度獲得した史上唯一の大打者。7人兄弟の末っ子として生まれ、秋田工高では理先輩の理不尽なしごきに反発して退部と復帰を7回繰り返し、東洋大でもわずか半年で退部、退学して秋田に戻る。一時はプロボウラーを目指すという異端の道を歩むが、社会人野球・東芝府中で四番打者として活躍し、プロ野球の道へ。1979年ドラフト3位でロッテに入団すると、プロ20年間で首位打者、本塁打王、打点王をいずれも5度獲得し、MVPを2度受賞。組織に群れない天才打者は中日の監督で常勝軍団を築き、名将の呼び声が高い。


・山田久志（阪急）
※秋田県能代市出身
通算成績　654試合登板、284勝166敗43セーブ、防御率3.18

「史上最高のサブマリン」と称された通算284勝右腕。能代二中で野球を始め、能代高に進学。2年夏の県大会では三塁で失策を犯してサヨナラ負けを喫した。3年から投手に転向。社会人野球・富士製鐵釜石に入社すると、サイドスローからアンダースローに変えて頭角を現した。68年のドラフトで阪急に1位指名されるも腰痛の治療のため、翌69年に途中入団し、エースとして75年からのリーグ4連覇に大きく貢献。最多勝3回、最優秀防御率2回、最高勝率4回獲得した。高速で鋭く落ちる伝家の宝刀・シンカーは「魔球」と呼ばれた。


・石井浩郎（近鉄、巨人、ロッテ、横浜）
※秋田県八郎潟町出身
通算成績　974試合出場　打率.289、162本塁打、536打点

　頭脳明晰で県内一の進学校の秋田高に進学。甲子園出場はならなかったが、高校通算32本塁打をマークした。一般入試で早大第二文学部に合格し、野球部に入部。主力として活躍し、社会人野球・プリンスホテルでは全日本の四番打者を務めた。1990年ドラフト3位で近鉄に入団。1年目から5年連続20本塁打以上放ち、94年には打率.316、33本塁打、111打点で打点王を獲得。代打の切り札として活躍した巨人では角刈りで古風な雰囲気が話題となり、日本テレビ系列の情報番組『THE・サンデー』で「拝啓、石井浩郎です。」という特集コーナーが設けられて話題を呼んだ。


・石川雅規（ヤクルト）
※秋田県秋田市出身
通算成績　472試合登板　171勝163敗3ホールド、防御率3.87

　身長167センチと球界では4番目に低いが、投球術で大男たちを翻弄する。秋田商高でエースとして3年夏に甲子園に出場。青山学院大でシンカーを習得すると、東都リーグ通算23勝とアマチュア球界屈指の左腕に成長し、2002年に自由獲得枠でヤクルトに入団した。抜群の制球力と多彩な変化球で新人から5年連続を含む11度のシーズン2ケタ勝利をマーク。大きな故障もないのも強みだ。通算171勝は現役最多で、名球会入りへあと29勝。是が非でも達成したい。



・攝津正（ソフトバンク）
※秋田県秋田市出身
通算成績　282試合登板　79勝49敗1セーブ73ホールド、防御率2.98

　秋田経法大付高で2年秋から投手に専念し、3年春のセンバツに出場。社会人野球・JR東日本東北でテークバックの小さい独特のフォームを身に付けた。2009年ドラフト5位でソフトバンクに入団。新人年からセットアッパーで2年連続最優秀中継ぎ投手賞を獲得し、先発転向した11年から5年連続2ケタ勝利とエースとして活躍。正確無比の制球力を武器に12年には17勝5敗、防御率1.91の好成績で最多勝、最高勝率、沢村賞のタイトルを獲得した。無口でシャイな性格であることからお立ち台が苦手だったが、マウンドでの頼もしい姿とのギャップでファンから愛された。

写真＝BBM