一昨年、創刊60周年を迎えた『週刊ベースボール』。現在、(平日だけ)1日に1冊ずつバックナンバーを紹介する連載を進行中。いつまで続くかは担当者の健康と気力、さらには読者の皆さんの反応次第。できれば末永くお付き合いいただきたい。 梨田昌崇が野村克也の後継者に?
今回は『1971年12月13日号』。定価は90円。
ドラフト会議の1週間後、11月26日、2回目を迎えた選抜会議が日生会館国際ホールで行われた。これはトレード会議とも言われ、二軍でくすぶっている選手の救済処置、戦力の均衡、人材発掘などのため前年より始まったもの。各球団がリストアップした選手をウエーバー方式で指名していく。
今年は133選手がリストアップされ、17人が選抜された。
名前だけ列記しておこう。
巨人が藤田賢治、
鏑木悦純、大洋が
大原和男、
石井輝比古、
広島が
前田四郎、
内田照文、
ヤクルトが
勝亦治、阪急が
市原明、高原栄一、
ロッテが藤井秀通、近鉄が相沢勝、
深代芳史、南海が
大塚徹、近藤義之、
三浦正規、
醍醐恒男、東映が
佐々木剛だった。
一部の参加者からは「選手の名前が誰かも分からん」という声が上がるほど、無名の選手ぞろい。ガラクタ市の酷評もあった。
規定としては1巡目が200万円+年俸、2巡目が100万円+年俸、以下はその選手の年俸だけがトレードマネーとして譲受球団が譲渡球団に支払うことになっているが、案の定、1、2巡目はオールパスだった。
成立した中の一番の大物はヤクルトの外野手・大塚徹。獲得した南海・
野村克也監督は「大塚は即戦力として期待していますわ」と話していた。
ちなみに南海は野村克也監督の捕手の後継者を狙い、ドラフト会議では浜田高の
梨田昌崇の指名を狙っていたらしいが、抽選順位の関係で近鉄にさらわれたという。
梨田の南海入りがあったらどうなっていたのか。
選抜会議に話を戻すが、指名されなかった中にはヤクルトのテータム(年俸700万)もいたらしいが、それだけの価値はなし、とどの球団からも声がかからなかった。
早くも制度を見直すべき、との声があちこちから上がっていた。
プロ拒否を強く打ち出し、ドラフト会議で、どこも指名しなかった松下勝実には表紙の見出しにあるように、巨人の陰謀説などがささやかれたが、実際には何もなく、すんなり松下電器入りが決まりそうだ。
では、またあした。
<次回に続く>
写真=BBM