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【Special Interview】A.ラミレス「ただ優勝だけを考えて戦っていく」

 

優勝を目指して戦う横浜DeNAベイスターズ。その裏側では何が起こっているのか。“in progress”=“現在進行形”の名の通り、チームの真実の姿をリアルタイムで描く、もう一つの「FOR REAL」。


 例年より3カ月ほど遅れて始まった2020年のシーズンも、まもなく折り返し地点。ベイスターズは56試合を戦い終えて、27勝26敗3分のセ・リーグ2位につけている。

 前半戦を振り返るとき、A.ラミレス監督の胸中にはどんな思いがこみ上げるのだろう。

「現段階で勝率5割を上回っていること、そして2位というポジションにいられていることに対しては、率直にうれしく思う。特に、先発を担うピッチャーたちのがんばりが目を引いた。一方で、『もっとできたはずだ』という気持ちもある――」

 就任5年目になる指揮官の言葉には、手ごたえと悔しさが入り混じっていた。

私が監督である限り、佐野は「4番・レフト」。


――まず攻撃面に関して。直近の対ドラゴンズ3連戦で数字を落としたものの、リーグで2番目に高いチーム打率(.267)をマークしています。主軸を中心として、打線はおおむね好調でした。

「今シーズンのテーマは“デイ・バイ・デイ”ベースボール。試合ごとに打線を組み替え、起用された選手たちそれぞれがいい結果を出してくれたことが、チーム打率の高さにつながったのだと思う。レギュラーだけではなく、主にバックアップを務める選手たちもよくやってくれて、打率を押し上げてくれた。中軸では、佐野恵太宮崎敏郎が非常に安定していた」

――日々、バラエティに富むラインアップが組まれたなかで唯一、「4番・レフト」で不動だったのが佐野選手でした。打率.333はリーグ1位。7月22日にようやく第1号が出たホームランも、気がつけばチームトップタイの9本にまで伸びています。

「佐野の成績は、多くの人が期待していた以上のものだろう。彼に期待を懸けてきた私の予想をも上回っている。もともと対右ピッチャーには強かったが、今年は対左でもすばらしい成績を残しているし、得点圏打率もゆうに3割を超えている。私がベイスターズの監督である限りは、彼を4番・レフトで起用するつもりだ。ベイスターズの4番・レフトは佐野。“ベイスターズ=佐野”と言ってもいいくらいの立場を彼には築き上げてもらいたい」


――一方で、外国人選手の成績は故障などもあってやや低調でした。J.ロペス選手、N.ソト選手、T.オースティン選手の3人について、それぞれのパフォーマンスをどう評価していますか。

「もちろん3人ともチームのためにベストを尽くしてくれていると思う。ソトに関しては、2年連続ホームラン王ということで相手チームから研究され、去年までとは違う攻め方をされているから、それに対して彼自身がアジャストしなければならない。それでも、シーズンが終わってみれば25〜30本塁打、昨シーズンまでと変わらぬ結果を出してくれるのではないかと思っている。ロペスは日米通算2000本安打という大記録が間近に迫っていて、モチベーションは高い。ただ、早く記録を達成したい、そのためには試合に出続けなければいけないという思いがプレッシャーになって、スランプにつながっているのかもしれない。7月24日の第4号から1カ月もホームランが出ていないし、打率も決して高くはないけれども、チームの勝利を誰よりも願い、人一倍ハードワークしていることは間違いない」

――オースティン選手は8月5日に登録抹消となり、故障からの復帰を目指しているところです。監督の期待も大きかったかと思いますが……。

「シーズンが始まったころはまさに期待どおりの活躍をしてくれたが、残念ながらケガが重なってしまった。もし彼が故障なくラインアップに居続けてくれたなら、現時点での戦績も違うものになっていたのではないか。彼はそう思わせてくれるほどのキープレイヤーだ。ファームではバッティング練習を再開している。まだ具体的に時期を明言できる段階にないが、とにかく一日も早い戦列復帰を待ち望んでいる」


“デイ・バイ・デイ”は常にチャレンジ。


――野手の起用法もバリエーションに富んでいます。たとえば二遊間。いろいろなパターンを試しているように見受けられます。

「基本的には、どの球場か、相手チームがどこか、相手のピッチャーは誰かといった要素を判断基準にして使い分けている。大和倉本寿彦柴田竜拓の3人はショートだけでなくセカンドも守れる選手たちで、大和と柴田は対右ピッチャーのほうが打率が高く、倉本は対左のほうが強いので、そういう部分を考慮しながらの起用になる。加えて、外野手の神里和毅は右ピッチャーをよく打っているが、神里を起用するときはソトがセカンドに入ったり。多くの選択肢があって、常にチャレンジではあるけれども、柔軟にベストなチョイスをしていきたい」

――キャッチャーの起用についてはいかがでしょうか。戸柱恭孝選手が先発マスクをかぶる機会が増えています。

「戸柱は数字的にいい結果が出ているからね。彼がマスクをかぶったときの防御率も低い。だからこそ、出場機会が増えている。嶺井博希もこのところ好調で、特に対左ピッチャーのときのバッティングがすばらしい。高城俊人はブロッキングの能力がほかの捕手よりすぐれていることもあって、基本的には(チェンジアップがワンバウンドするケースの多い)濱口遥大と組む形だ。今年、濱口―高城のコンビで10勝できる可能性も十分にあると思う」

――ファームには伊藤光選手も控えていますね。

「あくまで冷静に、数字を基準にした判断に基づいて抹消することになったが、彼の存在はチームにとって非常に大きい。豊富な経験を持つ彼の力が必ず必要になってくるので、そう遠くないうちに一軍に戻ってきてもらえたらと思っている」

平良は「エースになれる」。


――冒頭、前半戦を総括する言葉の中で先発陣の好投に触れていましたが、特に平良拳太郎投手の活躍には目をみはるものがありました。8月16日のスワローズ戦こそ短いイニングでの降板となったものの、それまでは先発した8試合すべてでクオリティースタートを達成。彼の活躍をどう見ていますか。

「今年のキャンプで練習を見ていたとき、平良は自信に満ちあふれていた。シーズンに入る前から、私は『彼はローテーション入りを競っている選手ではなく、すでにローテーションに入っている選手だ』と言ってきたが、そのとおりになった。試合で投げる姿を見ていても、ゲームマネジメントの能力が向上していると感じるし、すべての面において成長を遂げた選手だと思う。平良について、多くの人は『エースと呼べるほどではないけど、いいピッチャーだね』というくらいの評価なのかもしれないが、私は『エースにかなり近いところにいる。将来的にはエースになれるピッチャー』として、ほかの人たちが考えている以上に高く評価している」


――ただ、現時点ではその平良投手、さらに今永昇太投手も一軍にいない状況です。先発投手のやり繰りが難しい時期に来ているのかなと感じます。

「たしかに、少々タフな状況になっている。仮に、同じカードの中に今永が先発する試合と平良が先発する試合が含まれているとしたら、相手チームは『その2試合で1勝できれば』と考えるだろう。カードとしては『1勝2敗で御の字だ』と。彼らは相手がそう思うくらいの脅威を与えられるピッチャーなんだ。その2人がいない状況は正直なところ厳しいが、ケガが長引くことなく早い段階で戦列に戻ってきてくれることを願っている」

――ブルペン陣に関しては、山崎康晃投手と三嶋一輝投手をピックアップしたいと思います。まずは山崎投手。中継ぎとして復調を図っているところですが、監督の目に彼の状態はどのように映りますか。

「今月に入って、間違いなく状態は上がってきている。8月に限って見ると、9試合(8回2/3)に投げて被打率.172、防御率2.08という数字が出ていて、復調し始めていることは明らかだ。彼がツーシームとストレートのほぼ2球種しか投げないということは誰もがわかっていることなので、その2球種の緩急をどれだけつけられるかが重要になる。緩急がついて、かつ、もう1球種くらい増やすことができれば投球の幅は大きく広がってくる。そのあたりが、クローザーに戻れるかどうかのカギになってくるだろう。なんとか自分の力で、もとのポジションを奪い返してほしい。それだけのものを見せてもらいたいと思っている」


――代わってクローザーを務めているのが三嶋投手ですが、非常に安定した投球を続けていますね。

「ゲームマネジメントがしっかりとできる投手だ。たとえば、クイックモーションが速いので、俊足のランナーを塁に出してもそう簡単に盗塁を許さない。マックス154kmのストレートも含めて5〜6球種を、うまく考えながら有効に使い分けている。我々がいまの位置にいるのは三嶋のおかげと言っても過言ではないほど、非常にいい活躍をしてくれている」

――今後のクローザーはどうなりそうでしょうか。三嶋投手の起用を続けていくのか。それとも、復調しさえすれば山崎投手が返り咲くのか。

「やはり先ほども言ったとおり、山崎に自分のポジションを取り返してもらいたいという思いが強い。現状、山崎が6セーブ、三嶋が7セーブで、2人とも15セーブくらいできそうなペース。可能性としては、2人をクローザーでローテーションさせながら起用していくこともあるかもしれない」

後半戦のキーマンは……。


――先ほどの二遊間の起用法しかり、選手をローテーションさせながら使っていくのは、日程がタイトな今シーズン、選手の疲労度を考慮してのことでしょうか。

「それはあまり関係がなくて、あくまで“デイ・バイ・デイ”ベースボールを追い求めた結果としてのこと。毎試合、勝つためにベストな布陣を考え出し、選手を起用していく。かつては、レギュラーと決めた選手に関しては、相手ピッチャーが右腕から左腕に代わったとしても試合の最後まで起用したりもしていたが、今年はそういった託し方はしない。試合の途中で左ピッチャーが出てきたら、対左が苦手な選手に代えて左ピッチャーに強い打者を送り出す。とにかく勝つためのベストな決断をその都度重ねていくつもりだ」

――インタビューの最初に「もっとできたはずだ」との思いも吐露されていました。それはどのあたりを指しての発言だったのでしょうか。

「前半戦を振り返ると、特に序盤、逆転負けすることが何度かあった。やはり優勝するためには、リードしている試合をしっかりと勝ちきることが重要。逆転負けで落とす試合を極力減らしていかなければならない」


――今年はCSがありません。リーグ1位でレギュラーシーズンを終えなければその先がないことを考えると、首位のジャイアンツとどう戦うかがカギを握ることになってきます。

「たしかにそのとおり。でも、ジャイアンツのことをあれこれと論じる以前に、どのチームと対戦するときであっても3連敗を避けることが重要だ。もちろん、ジャイアンツとのカードでは最低でも2勝1敗で勝ち越していく。そういうことを続けていけば、ゲーム差は徐々に詰まっていくだろう。CSが開催されない今シーズンは、2位も最下位も同じだというくらいの思いで、ただ優勝することだけを考えて戦っていく」

――さて、そのために後半戦のキーマンになるのは誰でしょうか。

「キープレイヤーが1人いるだけでは優勝することはできない。すべての選手がベストを尽くし、チームとして噛み合ってこそ、優勝は狙える。強いてキーマンの名前を挙げるなら、まずはソト、オースティン、佐野の3人。ソトが復調して過去2シーズンと同等の活躍をすること、オースティンが一軍に帰ってくること、そして佐野は引き続き安定した結果を残すことだ。さらに、後半戦を戦ううえで私が最も重要だと考えているのが、1番バッター。いかに塁に多く出て、多く得点を記録できるか。つまり、梶谷隆幸こそがいちばんのキープレイヤーだと考えている」

――今年の梶谷選手は充実したシーズンを送っていますね。

「ここまで、非常に生産性が高い成績を残している。27四球、38得点はいずれもリーグ上位の数字だし、打率(.274)も悪くない。2017年のように、20―20(20盗塁20本塁打)にも手が届くかもしれない。後半戦も変わらぬ活躍を続け、優勝を目指すチームを牽引する存在になってほしい」



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写真=横浜DeNAベイスターズ
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