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週べ60周年記念

名門西鉄ライオンズ、落日近し?/週べ回顧1971年編

 

 一昨年、創刊60周年を迎えた『週刊ベースボール』。現在、(平日だけ)1日に1冊ずつバックナンバーを紹介する連載を進行中。いつまで続くかは担当者の健康と気力、さらには読者の皆さんの反応次第。できれば末永くお付き合いいただきたい。

ダイエーも業務提携の候補に?


自主トレで選手のストレッチ? の手伝いをする稲尾監督


 今回は『1971年12月27日号』。定価は90円。

 西鉄ライオンズは、どこに行くのか──。
 かつて3年連続日本一に輝いた名門だが、今や見る影もなく落ちぶれた。
 最大の理由は“黒い霧事件”だが、これも年俸が高騰した大物選手たちを次々手離し、挙句、永易将之ら安いが札付きの選手をつかまえさせられた結果でもある。
 しかも、これで経営の合理化が進めばいいが、すでに累積赤字は10億円とも言われる。資本金500万円の企業の赤字としては破格だ。

 それでも木本オーナーは、
「ライオンズの赤字はいまさら驚くまでもない。球団創設以来、黒字になったことなど一度もない。球団は地域社会への西鉄のサービスと割り切って、今日まで運営しているのです」
 実際、黒い霧事件で責任を取って辞めた形になった楠根前オーナーは、かつてこんな話をしていた。
「(昭和)38年、某電機メーカーから8億で買収の打診があった。だがワシは売らんかった。西鉄が九州一円の利用者から稼がせてもらった利益の還元のつもりで経営しているのであって、赤字球団だからと言って手離すわけにはいかなかった」
 ただ、記事は書く。
『現在のライオンズは地域社会への利益の還元になっているのだろうか』

 71年の観客動員は前年比で39パーセントダウン。球団では外野の無料開放などをし、ファンサービスを進めていたが、これに対し、熱狂的ファンは否定的だ。
「あんなのサービスじゃない。プロならお客から入場料を取らないでどうするのだ。強いライオンズなら、いくら高くても見にいきますしね」

 青木球団代表は補強について、
「短期的に片付けようとすれば失敗する。ドラフトで得た新人をファームで鍛え、底辺のしっかりしたチーム作りを長期的に考えているのです」
 ただ、ならばドラフトで積極的に有望株を指名しているのかと言えば、高くなりそうな社会人や大学の大物を避ける傾向がはっきり。ファームの強化もうまくいっていない。

 稲尾和久監督は3年契約の最終年。就任以来の信頼するスタッフが次々クビを斬られ、新しいコーチ陣はフロント主導で決まっていたらしい。春のキャンプではパフォーマンスもあってか張り切っていたが、秋季キャンプでは表情が冴えなかったという。

 さらに一番の問題は年々リアルさを増す、身売り話だ。
 自分の会社がどうなるか分からないとなれば、選手もなかなか集中できない。
 過去、大阪ダイキン、ブリヂストン、資生堂、日米コカ・コーラ、スーパーダイエーらの買収説、業務提携説などがあったが、どれもまとまらなかった。
 ダイエーの名前に少しドキリとする。

 ただ、買収の準備らしきものはすでにできていた。
 球団経理の確立だ。本社からは9億円の長期貸付金を受けていたが、1年1年に関しては、本社から年間1億数千万円を興行料として受け取り、さらに放映権収入などを含め、2億円を確保。この枠内で球団を運営するよう指示されていた。
 身売り先が、この9億円をなんとかしてくれれば、きれいに売ることができる準備が整ったとも言われた。
 球団最低の人件費が1億3000万円と言われ、そのほかの経費で簡単に2億円には達してしまう。補強資金をつくるとしたらベテランの大物選手を売って、トレードマネーを手にするくらいしかない。ただ、もうそのような手駒がなかった……。

 裏方で泥船を降りる人も出ていた。
 芽野元一軍マネジャー、萩野投手兼スコアラーが相次いで退社。芽野はマネジャーから球団営業部に配置換えを告げられた際の退社だった。
 また若手内野手の甲斐和雄が「家庭の都合で辞めたい」と言い出し、稲尾監督らが説得していた。

 一方、この泥船に乗り込むのが、ロッテから移籍の榎本喜八
「こんなポンコツを拾ってくれた西鉄球団のためにも一生懸命頑張って、少しでも西鉄ファンの期待に応えようと思う。新人のつもりでやり直します」
 35歳のエノさんは、会見でそう言い、深々と頭を下げた。

 では、またあした。

<次回に続く>

写真=BBM
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