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「プロ志望高校生合同練習会」で心にグッときた球児の言葉

 

東播磨高・宮本一輝は8月30日、プロ志望高校生合同練習会(甲子園)のシート打撃の3打席で、2安打をマークした


 新型コロナウイルスの感染拡大を受け、2020年の高校野球は異例のシーズンとなった。3月のセンバツ、8月の選手権と春夏の甲子園大会が中止。春季大会もほぼ中止となり、緊急事態宣言解除後も部活動再開は6月以降と、練習試合もままならなかった。そして、6月下旬から8月末にかけ、甲子園出場をかけた「地方大会」に代わる全国47都道府県主催の「独自大会」が49地区で開催された。

 実力を発揮する場が限られた高校球児を救済するため、初めて開催されたのが、今回の「プロ志望高校生合同練習会」である。つまり、プロを目指す高校生に対して、NPBスカウトへアピールする場が設けられたのである。

 8月29、30日に西日本会場となった甲子園には77人が参加。それぞれがプロへの思いを込めて、勝負した。ここで、最も印象に残ったコメントを紹介したい。今回の合同練習会は新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、主催者が定めるガイドラインの下で、取材規制があった。対面によるインタビュー(指名選手)は1日3人まで。しかも、密を回避するため、取材する人数も最小限に絞られた。指名選手以外は、取材陣が希望選手をピックアップし、代わりに主催者が聞き、コメントを出すという形式が取られたのである。

 2日目(8月30日)のシート打撃で、2安打を放ったのが東播磨高・宮本一輝である。地元・兵庫の公立校も、甲子園は近くて遠い場所。今夏の兵庫県主催の独自大会では、8強進出(5回戦で大会終了)へ導いた主将である。今回は練習会という形ではあったが、聖地と言われる夢舞台で持てる力を出し切った。

「今日の結果は、出来過ぎだと思います。自分のセールスポイントは走力ですが、盗塁死して自分に腹が立っていました。ですが、良い投手から2本もヒットを打つことができ、自信がつきました。土田君(土田龍空、近江高)、奥村君(奥村真大、龍谷大平安高)らのトップレベルの選手が楽しみながらプレーしていたことが印象に残りました。そんな姿を見て自信を持つことも大切だと感じました」

 ここからが、本題である。

「新型コロナウイルスの影響で、夏の大会がなくなったときは、大きな喪失感がありましたが、代替大会や合同練習会などのチャンスをいただけた僕らの学年は、周囲の人に助けてもらい、恵まれていたと最後は感じました。その意味でも、軽率なプレーはできないと思い、今日は一生懸命プレーしました。僕らがプロ野球選手から勇気をもらっているように、将来は子どもたちへ夢を与えることができるような選手になりたいです」

 新型コロナウイルスによって失ったものは大きかったが、得たものもさらに大きかった。凝縮された宮本の言葉は、心にグッとくるものがあった。今後、野球界へ恩返しすることを誓った宮本の将来から目が離せない。

文=岡本朋祐 写真=佐藤真一
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