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【MLB】ダルビッシュ4試合連続勝ち星、ピンチでも安定感

 

今やすべてのボールを高水準で扱うダルビッシュは、負けない投手としてメジャーでも高い評価を受けている


 昨シーズン、カブスのダルビッシュ有投手は5月4日から6月21日まで10試合連続先発登板をして勝ち負けがつかないという、珍しいメジャー記録に並んだ。1977年のフィリーズのランディ・ラーチ以来である。

 6月15日のドジャース戦は7回2安打1失点10奪三振、5月4日のカージナルス戦は4回6安打5四球5失点、ストライクが入る日もあれば入らない日もある。試合後ダルビッシュは自虐的に「勝利だけじゃなくて負けもしない。10試合投げて何もない0勝0敗ですよ。何もやっていないような感じがする」と苦笑いした。

 珍しい記録は、6月26日のブレーブス戦で負けがついたことでピリオドが打たれた。そして7月17日には2カ月半ぶりに勝ちがついた。このころからストライクゾーンでどんどん勝負するピッチングができるようになった。7月は5試合に先発してわずか2四球、8月も1四球である。とはいえそれだけゾーンで勝負すれば打たれる機会も増える。

 その2カ月間に13本のホームランを被弾。試合結果は10試合で3勝2敗、チームも5勝5敗だった。9月は軸にしてきたカッターに、速いカーブ、ナックルカーブを絡ませ、相手打線を幻惑、圧倒的なピッチングが戻ってきた。12日からの3試合で39奪三振。果たしてこのような投球がシーズンを通してできるかが20年に向けての課題となっていた。

 そして今季、ダルビッシュは見事なピッチングを見せている。8月18日のカージナルス戦、8安打を許したが、4回は無死満塁のピンチを8球で切り抜けるなど冷静かつ精巧な投球で、6回1失点。6対3の勝利を導き、4連勝。8月23日も勝利し5連勝に。5勝はリーグトップタイ、防御率は1.70は5位、イニング数は7位タイの37回と、先発投手の成績ランキングで上位につけている。

 デビッド・ロス監督は「満塁のピンチでもマウンド上で、球種のレパートリーを巧みに使ってゲームプランどおりに投げていた。球界でも最高のピッチャーの一人」と信頼する。トミー・ジョン手術後のダルビッシュは、脳の指令どおりに体が動いてくれないとよくこぼしていた。それがあれだけ多彩な変化球を投げ、真っすぐが速くても、ピッチングが安定しない理由だった。

 それが今は高度なレベルでイメージどおりに投げられる。カージナルス戦のピンチは、得点1対0、4回無死二、三塁で、打者は過去4試合で9打数4安打2本塁打と絶好調のブラッド・ミラー。「3ボール2ストライクでボールになるスライダーを投げた。いつもならストライクゾーンに投げるんですけど、ミラーは調子がいいから」。歩かせて満塁とし新人のカールソンを初球カッターで緩い投ゴロに打ち取った。

 ベテラン、ファウラーを内角低めのカッターで空振り三振。ウィータースを80マイル(約128キロ)のナックルカーブで右飛。わずか8球でピンチを切り抜けた。2013年、サイ・ヤング賞投票で2位になったときは大きなスライダーで277個の三振を奪ったが、ボール球を見逃されることも多かった。

 今では小さく曲がるカッターを軸にストライクゾーンで勝負し、多彩な変化球を精巧に配置することで、狙って併殺も奪える。ダルビッシュは8月16日に34歳になったが、真っすぐの速度も97、98マイル(約155キロ〜157キロ)と衰えを知らず、長いキャリアの中でも最高の状態で優勝を目指す強豪カブスをけん引しているのである。

文=奥田秀樹 写真=Getty Images
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