週刊ベースボールONLINE

高校野球リポート

清宮福太郎が早実の主将に抜擢された理由は?

 

5打点の活躍で主将の仕事


早実の四番・清宮福太郎は9月20日、東京都一次予選第19ブロック2回戦(対中大杉並高)で特大の左越え3ランを放った。チームは20対0で勝利し本大会出場を決めている


 清宮幸太郎の4歳下の弟・福太郎(2年)が兄に続いて、早実の主将に就任した。

 新チーム初戦。早実は東京都一次予選(対中大杉並高)を20対0の5回コールドで、本大会出場を決めている。

 会場は早実の練習拠点である「王貞治記念グラウンド」。慣れ親しんだ場所とはいえ、公式戦のスタートは誰もが重圧を感じるものだ。

 上級生の自覚。清宮もそうだった。前夜は「自分の代の責任。重みなのかな?」と下級生だった今夏までとはまったく異なる感情が芽生えていたという。

 そんな重苦しいムードを、キャプテンのバットが取り除いた。1回裏一死二、三塁。「四番・一塁」で先発出場した清宮が、逆方向へ先制2点適時二塁打を放った。早実・和泉実監督は試合後「立ち上がりに打ってくれたので、チームとして落ち着いた」と手放しで喜んだ。

 以降、早実は伝統の強力打線が爆発し、13安打で毎回の20得点で圧倒した。清宮は3回裏無死一、二塁から左翼へ推定120メートルの特大3ラン。5打点の活躍で主砲の仕事を果たした。

 なぜ、清宮は主将に抜てきされたのか?

 野球人生初の大役だ。和泉監督は明かす。

「旧チームから出場(今夏は背番号7)しており、選手の中でも『清宮』という感じでした。経験したことがないというので、本人がどう感じるか? 『これから成長するために頑張りたい』と。2年生は(清宮を含めて夏に出場していたのが)3人(エース右腕・田和簾、中堅手・石郷岡大成)いますが、彼しかいない感じ。よくやってくれている」

 清宮も「キャプテンをやることで、野球人生でプラスになる」と前向き。守備中はナインを鼓舞し、攻撃中も声を出し「自分のホームランよりも、チームメートのホームランのほうがうれしい」と、17年に主将を務めた兄と同じく、リーダーとしての言葉を発していた。

避けて通れない兄との比較


 兄は高校通算111本塁打を放った左のスラッガーに対して、弟は182センチ90キロの右の大砲。この日の本塁打も、大きな弧を描き、左翼後方にある室内練習場を直撃。長距離砲としての大きな可能性を感じる一打だった。「ファーストストライクを打てたのは良かった。それはいつもやっていること。自分のできることをやるだけ」と職人気質のコメント。

「感触? 打った瞬間にありましたが、特に何があったわけではありません」と冷静に語り、主将として「ホッとしたと同時に、これから秋の本大会で勝っていかないといけない」と、気を引き締めた。

 避けて通れない、兄との比較。今夏までは左翼手だったが「一塁が決まらなかったので、自分が行くことで、はまれば」と、秋からは兄と同じ背番号3を背負っている。場内アナウンスでは「レフト・清宮君」と言い間違える場面もあり、ポジション転向から間もないことをうかがわせた。

「兄は兄で早実を引っ張ってくれた。弟は弟で彼の良さをいっぱい持っている。彼らしいチームを作っている。投手と四番が夏を経験しているので、1試合1試合を積み上げることで強いチームになる予感、期待をしている。このご時世ですから、体調を含めて、1日1日を大事に過ごしていきたい」(和泉監督)

 早実の甲子園出場は兄・清宮が主将だった2017年春のセンバツが最後。弟・清宮は言う。

「勝てば行けるものなので……。行きたい気持ちはありますが、特別な気持ちは……」

 秘めたる思いはあえて、表には出さない。逆に気持ちの強さを感じる。東京都の本大会が開幕する10月17日(抽選会12日)まで、レベルアップを誓う。名門校をけん引するチームリーダー・清宮のバットから目が離せない。

文=岡本朋祐 写真=長尾亜紀
週刊ベースボール編集部

週刊ベースボール編集部

週刊ベースボール編集部が今注目の選手、出来事をお届け

関連情報

みんなのコメント

  • 新着順
  • いいね順

新着 野球コラム

アクセス数ランキング

注目数ランキング