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勝てば甲子園につながる一戦で鎌倉学園が力を発揮できた理由

 

最も変わったのは監督自身


関東大会出場「2枠」をかけた秋季神奈川県大会準決勝。鎌倉学園高は桐蔭学園高を5回コールドで(10対0)決勝進出を遂げ、33年ぶりの関東大会出場を決めている


 勝てば、甲子園につながる。負ければセンバツはほぼ絶望……。相当のプレッシャーだ。

 大一番の神奈川県大会準決勝。鎌倉学園高は5回コールド(10対0)で桐蔭学園高を撃破し、33年ぶりとなる関東大会への出場を決めている。来春のセンバツ甲子園への貴重な資料となるステージであり、1969年以来、3度目の春へ、大きな壁を乗り越える形となった。
 
 2013年秋から母校・鎌倉学園高を率いる竹内智一監督は17年秋にも、チームを4強へと導いている。しかし、慶應義塾高との準決勝を2対3、関東大会最後の1枠(同年は地元・神奈川県開催のため出場3枠)をかけた桐光学園高との3位決定戦も0対1と惜敗した。

 3年前から、何が変わったのか。もちろん、選手も変わった。そして、部員数も「新しいチャレンジ」と、2年生34人、1年生38人と、同校ではかつてない大所帯という変化も見られた。かつての3分の2の部員が背番号を着けられていた状況から一変し、ベンチ外が3分の2。しかしながら、メンバー外が献身的に打撃投手を買って出たり、地区予選では背番号をもらいながら、県大会では外れた選手も腐らず、サポート役に回った。竹内監督は「良い方向へ進んでいる」と語る。実は、最も変わったのは自身であるという。

「3年前は指導者としての後悔がある。生徒に、何もしてあげられなかった」

 17年秋。横浜高との準々決勝は台風による順延により、平日開催(水曜日)となった。「思いもよらぬ展開」(竹内監督)と、8対8の8回裏に一挙7得点でコールド勝ちを収めた。

「(準決勝まで)木、金の2日間。急に取り上げていただく機会も増え、地に足を着けずにいってしまった……」。指導者の誰もが通る道であるが、監督としての経験不足を露呈したという。同じ過ちは犯せないと心に秘めてきたが「落ち着いてやってくれた」と、この日の選手たちは、想像以上に頼もしかった。

「あえて、強がっていきたい」


 鎌倉学園高の勝因を挙げるとすれば「入り」だった気がする。試合前の整列。審判員の「集合!」の合図と同時に、25人のメンバーは三塁ベンチ雨から猛然とダッシュ。相手校よりも1秒以上は、早かったと思われる。試合展開とは直接、関係ない部分かもしれないが、気迫と集中力が違った。チームの一体感で結果的に1回表に2点を先制。高校野球における、序盤に握る主導権は非常に大きいのだ。

 試合後、竹内監督は関東大会について問われても、平静を保つ。

「私自身がいつもどおりでなくなってしまうので、甲子園へ向けては通過点だ、と。負ければ終わり。甲子園までは勝つしかない。あえて、強がっていきたいと思います」

 27日の決勝は、関東大会における「神奈川1位」と「同2位」を決める一戦でもある。どんな大舞台でも、着飾ることはできない。取り組んできたことを信じて発揮するのみ。鎌倉学園高は部員72人の結束力で勝負を挑む。

文=岡本朋祐 写真=大賀章好
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