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ベースボールゼミナール

捕手併用制は投手側から見るとどんな影響がある?/元阪神・藪恵壹に聞く

 

読者からの質問にプロフェッショナルが答える「ベースボールゼミナール」。今回は投手編。回答者はメジャー・リーグも経験した、元阪神ほかの藪恵壹氏だ。

Q.巨人は2019年シーズンに3捕手併用制で5年ぶりに優勝しました。一部バッテリーの固定はありましたが、シャッフルされていることが多かったように思うのですが、ピッチャーとキャッチャーの相性はないのでしょうか。あるとしたら、ピッチャー側から見て捕手のどんなところに違いを感じるのでしょうか。(静岡県・56歳)



 巨人の場合、なぜ3捕手併用制になったのか、まずそこを考えなければいけないと思います。炭谷銀仁朗選手、小林誠司選手、大城卓三選手と、それぞれ異なる特徴を持った、総合的には同程度の力があるキャッチャーが3人いて、固定することができなかったことが事の発端でしょう。これがうまくハマり、5年ぶりにVを奪回したものですから、3捕手併用制がポジティブに報じられていますが、原辰徳監督の本心は、おそらく「1人に固定できるものならしたかった」でしょう。阿部慎之助二軍監督の現役時代のように、突き抜けて力の差を見せつける存在がいれば固定していたはずです。

 基本的にペナントレースは同一チームと3連戦を行い、対戦相手を変えてまた3連戦というのがパターンです。キャッチャーの多くは3連戦を大きな枠でとらえて、配球、攻め方を組み立てていくことがほとんどです。仮にそれで失敗しても、なぜダメだったのかをインプットして、次に同じカードが回ってきたときに生かすのですが、3連戦で毎試合キャッチャーが違った場合、果たしてどこまで継続性を持って相手打線を抑えることができるでしょうか。

 バッテリーミーティング等で同じデータを共有していたとしても、キャッチャーが3人いれば3人が異なるアプローチ(ある程度は共有する部分があったとしても)、リードをするわけですから、ピッチャーの目線から考えても、継続性という部分では難しいように感じます(逆にガラリと変わるのもいいのかもしれませんが……)。

 ピッチャーとキャッチャーの間には当然、相性はあります。構え1つ取ってみても、大きくアバウトに構えるキャッチャーもいれば、コースビタビタに構えるキャッチャーもいて、これはもう、好みの問題です。また、リードの違いはランナーを置いた時に顕著に現れます。一例を挙げるなら、肩に自信がないキャッチャーは真っすぐ系が増えたりするのもそうですね。また、「キャッチャーは経験がすべて」と言いますが、さまざまな経験を積んだキャッチャーのほうが怖さを知っているため、ピンチでの配球に深みが出ますね。

 ちなみに、私はリードに明確な意図(どこに打たせたいのか、最後はどんな球種でどのように打たせたいのか)が見えてくるキャッチャーが好きでした。ただ、これも好みの問題と言えます。

●藪恵壹(やぶ・けいいち)
1968年9月28日生まれ。三重県出身。和歌山・新宮高から東京経済大、朝日生命を経て94年ドラフト1位で阪神入団。05年にアスレチックス、08年にジャイアンツでプレー。10年途中に楽天に入団し、同年限りで現役引退。NPB通算成績は279試合、84勝、106敗、0S、2H、1035奪三振、防御率3.58。

『週刊ベースボール』2020年9月21日号(9月9日発売)より

写真=BBM
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