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[MLB]MLBの拡大プレーオフは来季以降も続くのか

 

新型コロナウイルスの影響もありプレーオフは16球団の拡大版に。この方式だと勢いに乗ったチームが勝ち上がる可能性が十分に考えられ、今季7割の勝率を誇ったドジャース[写真]が世界一を逃したら……


 今季のMLBは新型コロナウイルスの影響で大きく変わった。60試合の公式戦を無観客で行い、収益が落ちた分、16球団参加の拡大プレーオフが行われる。選手枠は28人になり、7イニングのダブルヘッダーが頻繁に行われた。ナ・リーグもDH制を採用した。延長では走者を二塁に置くタイブレーク・ルールが採用された。

 移動を減らすために「東・中・西」の3地区で分けて戦い、ア・リーグとナ・リーグの区別が意味を持たなくなった。パンドラの箱を開けるという言葉がある。普通なら簡単にできなかった改革が、新型コロナで実現してしまった。

 興味深いのは今後平常に戻ったとき、何が残るのかである。先日ロブ・マンフレッドMLBコミッショナーが「私は拡大プレーオフが好き。スポーツファンはバスケットのNCAAトーナメントのような組み合わせ表が好きで、誰が勝ち上がるか見たいもの。第1ラウンドで、いろいろなところで一気に試合があるのも人々の関心を集められる」と言う。

 参加チームが10球団から16球団になり試合数も増えたことでポストシーズンの放映権料は2〜3億ドルも増加するそうだ。儲(もう)かるというのでオーナーたちも支持するのだろう。ただし忘れてはならないのは、162試合の長い公式戦の価値を貶(おとし)めてはならないということ。

 MLBは1968年まで両リーグのペナントレースで一番上の成績を挙げたチームがワールド・シリーズに進むシンプルな流れだった。69年チーム数が増え2地区に分かれ地区王者同士の5試合シリーズを制したものがワールド・シリーズに出るようになった。85年に7試合シリーズに変わった。95年に3地区に分かれ、その勝者プラス地区の勝者ではないワイルドカードのチームが加わる8球団のプレーオフとなった。

 12年にワイルドカード枠を増やし10球団となった。プレーオフは盛り上がりお金も儲かった。その一方で97年のマーリンズはア・リーグ東地区の2位でブレーブスに9ゲーム差をつけられていたのにワイルドカードから勝ち上がって世界一になった。

 14年のジャイアンツとロイヤルズも公式戦80勝台で地区2位にもかかわらず、ワールド・シリーズで相まみえた。14年はナショナルズとエンゼルスがそれぞれのリーグの公式戦最多勝チームだったが、今では誰も覚えていない。

 そして今年16球団に拡大されたことで、勝率5割前後のチームもいくつかプレーオフに進出する。ドジャースは現地時間9月22日終了時点で39勝16敗(勝率・709)。勝率7割を超すチームはこの半世紀で2チームしかなかったが、このシステムだと、5割前後のチームにあっさりやられるかもしれない。

 とはいえパンドラの箱は開けてしまった。第一ラウンドの8カードは大いに盛り上がった。あちらこちらでドラマが生まれニュースになる。来季以降、16球団は10球団に戻らないだろう。16球団のままか、あるいは14球団くらいで、新たな組み合わせを考えるのか……。

 もちろん選手会は簡単には受け入れない。5割前後でもプレーオフに進めるなら、オーナーはFA選手に大金を投じなくなる危惧があるからだ。ポストシーズンを過密スケジュールにすることで投手のケガの心配も出てくる。とはいえ選手会もお金が大事なのである。


文=奥田秀樹 写真=Getty Images
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