週刊ベースボールONLINE

MLB最新事情

[MLB]レイズの戦い方はMLBの野球を変えるか

 

さまざまなデータを駆使し、28人をうまく使ってア・リーグ東地区優勝、ポストシーズンを勝ち上がっているレイズ


 レイズはブルージェイズとのワイルドカード・シリーズで、第1戦は右腕のシューメーカー、第2戦は柳賢振と対戦。それに応じて先発メンバーを大きく変えた。2試合とも同じ打順を打ち、同じポジションを守ったのは八番センターのケビン・キアマイアーと九番・捕手のマイク・ズニーノの2人だけ。

 ブランダン・ロー二塁手とウィリー・アダメス遊撃手は打順を、ランディ・アロザレナ、マニュエル・マーゴット両外野手は打順と守備位置の両方が変わった。新たに先発したのは一番、マイク・ブロッソー、四番、ヤンディ・ディアス、六番、ハンター・レンフローの3人の右打者。結果合わせて9打数3安打2四球4打点3得点の戦績。柳攻略の鍵だった。

「うちのチームは毎日違うラインアップを組めるように作られている」と胸を張るのはケビン・キャッシュ監督。9月11日、レッドソックス戦で、史上初めて全員左打者を並べ話題になったが、この日は右が7人。今季は選手枠が28人と広いのも手伝って、フレキシブルに打順を組んでいる。

 第1戦で一番・DHで起用されながら、第2戦は出番のなかった筒香嘉智選手は、9月26日の会見で「いろんなデータを重視して、選手起用をしている」と明かした。終盤戦、筒香は何度も一番で起用された。「監督から『塁に出ろ』と笑いながら言われました。なかなか固定しない打順の起用法で、さまざまなデータや、対戦チームの相性を考えながらしている。打順打順で役割はあるが、(僕自身は)変に意識せずという感じです」と言う。

 例えばレンフローはシーズン中、打率.156と調子が出ず、出番も限られていたが、マッチアップを重視した。結果2回に柳から満塁本塁打。8対2の勝利の最大要因だった。レンフローは「ベンチに座っていても首脳陣から出番はあると伝えられていた。信用されていると分かっていたのが大きかった」と振り返る。

 昨季パドレスで33本塁打のスラッガーだが、ここではスター扱いは求めない。「個人成績は関係ない。ここでは試合に勝つためにいる」と言い切る。レイズはオープナーを最初に成功させたので有名な球団だが、今季はブルペンピッチャーの使い方もフレキシブルだ。

 第1戦、公式戦で主に9回を投げ、6セーブを上げていたニック・アンダーソンは7回に起用され、相手の中軸打者を抑えた。9回はピート・フェアバンクスで、レイズで今季セーブを上げた13人目の投手になった。投手起用でもポイントはマッチアップだ。相性で有利な相手に当て、そのためには手駒はあればあるほど良い。あいにく今季のレイズは投手陣にケガが多かったが、誰にも3連投をやらせないなど、細心の注意を払っていた。

 レイズにはマイク・トラウトのような看板選手はいない。それでも強いのは明らかに理由がある。キャッシュ監督は「われわれを手強いチームにしているのは、試合に勝つために28人のロースターが使われていること。シーズン中もポストシーズンも同じ。選手がそのアプローチを信じ理解してくれているのが大きい」。

 データに基づくマッチアップ重視で戦い続けるレイズ。世界一になればこの戦い方は今後さらにMLBで広まるのではないだろうか。

文=奥田秀樹 写真=Getty Images
週刊ベースボール編集部

週刊ベースボール編集部

週刊ベースボール編集部が今注目の選手、出来事をお届け

関連情報

みんなのコメント

  • 新着順
  • いいね順

新着 野球コラム

アクセス数ランキング

注目数ランキング