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高校野球リポート

なぜ高校野球「東京都秋季大会」で有観客試合を実現できたのか?

 

東京六大学をお手本に


2020年度秋季東京都高等学校野球大会は「有料観客試合」で行われている(ダイワハウススタジアム八王子)


 東京都秋季大会が10月18日に開幕した。来春のセンバツ出場へ貴重な資料となる場である。「関東・東京」の一般選考枠は6校。東京1位校は当確、2位校は関東5位校(関東大会8強進出校)との比較検討というのが、毎年の流れとなっている。

 この秋、全国の都道府県大会、10地区大会を通じて「無観客試合」(控え部員、保護者のほか、生徒、OB会らの入場を許可する大会もある)がほとんど。新型コロナウイルスの感染拡大は依然として予断を許さない状況下であるが、東京都大会は今秋から徹底した感染予防対策を講じた上で「有料観客試合」を実施している(同ブロック予選は無観客試合)。

 新型コロナウイルスの感染者数が全国最多である東京都でなぜ、有観客(収容人数は上限5000人)を実現できたのか? 東京都高野連・武井克時専務理事は言う。

「各方面の入念な準備と、十分な対策を重ねて開幕しました。10月6日には高野連のホームページに感染症対応ガイドライン(全65ページ)を公開いたしました。感染予防のご協力、場内での注意喚起に加え、入場に際しては緊急時の連絡先として、メールアドレスのご登録を要請させていただき、また、座席番号の記録も呼びかけています。どこまで追跡できるか分かりませんが、専用のソフトを作り対応していきます。『コロナとの共存』を念頭にした安全と安心な大会運営。何とか、無事に大会が進行するため、高野連としても新たなステージへのチャレンジをしていきます」

 実際に踏み切ることができた理由は?

「神宮で東京六大学リーグ戦が実施されたのを、お手本にさせていただいています。東京六大学野球連盟さんからは、多くのレクチャーを受けてきました」(武井専務理事)

 今後、感染状況が安定し、行政機関から増員許可が出た場合には、この上限5000人を緩和する可能性ある。また、楽器演奏についても3回戦以降は、感染症専門家の意見を取り入れながら「検討する」としていた。だが「その後の連盟理事会において、この秋は演奏を遠慮していただくことになりました」(武井専務理事)。準決勝、決勝(11月14、15日)は神宮が試合会場で、増員可となった場合は外野席の開放も検討されている。

楽器演奏は断念


 東京六大学リーグ戦ではこの秋、指定された左翼席と右翼席の一角に応援団(部)のエリア(100人以内、第7週と第8週は150人以内)を設置したが、あくまでも一般客の入場を許可していないことから実施できた。東京都高野連では楽器演奏は今秋に関しては断念し、1人でも多くの高校野球ファンに観戦してもらうことを優先した。

「これから(来年へ延期となった)東京五輪を開催しよう!! という中で、スポーツ観戦を制限するのは、都民にとってもストレスですし、不安にもなる。勇気を出してあげたい。若者のスポーツを、盛り上げていかないとダメだと思うんです。今日は気候も良く、高校野球ファンも喜んでいただいたようで、良かったです」(武井専務理事)

 試合会場のダイワハウススタジアム八王子のスタンドで、背筋を伸ばした武井専務理事。「ウィズコロナ」と向き合う高校野球――。この新たな挑戦を、東京が発信する意義は大きい。全国的にも大会運営における「モデルケース」として、参考になるに違いない。

文=岡本朋祐 写真=黒崎雅久
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