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週べ60周年記念

阪神・江夏豊と松葉杖の少女/週べ回顧1972年編

 

 一昨年、創刊60周年を迎えた『週刊ベースボール』。現在、(平日だけ)1日に1冊ずつバックナンバーを紹介する連載を進行中。いつまで続くかは担当者の健康と気力、さらには読者の皆さんの反応次第。できれば末永くお付き合いいただきたい。

西鉄・東尾修の災難?


強心臓で鳴らした東尾


 今回は『1972年3月13日号』。定価は100円。

 春季キャンプたけなわ。今回も小ネタを拾っていく。

 近鉄の永淵洋三が亀裂骨折(肋骨か。軽傷らしい)でキャンプを離脱。オープン戦途中からしか復帰できないのではと言われていた。
 滅多に弱音を吐かない永淵が、さすがに渋い顔をしていたので、同情した記者が「大変ですね」と言うと、こう答えた。
「うん、何がつらいと言ったって、酒が飲めないんだからな。酒が入らないせいか夜も眠れないよ。まったくひどいことになったもんだ」
 
 西鉄の島原キャンプに木本オーナーが陣中見舞いに来た際の話だ。後ろにいてオーナーのあいさつがよく聞こえなかった東尾が「今、何を言ったんだ」と近くの選手に聞くと、
「お前らは球団がつぶれるからとか、つまらん心配はせんでいい。ゼニのことなら心配せんでもいくらでも出してやるって言ってるんだ」
 と答えた。
 実際は、前半分だけホント。後半のゼニを出すなんて言っていなかったが、真に受けた東尾は、
「嘘言え、ゼニはいくらでも出すなんて、西鉄のシブチンが金など出すもんか」
 吐き捨てた。これが、いつの間にか青木球団社長の知るところとなったらしい。
 後日、木本オーナーが打撃マシンを送った際、東尾が「へえ、うちも大したもんだな」と眺めていると後ろから青木社長にポンと肩をたたかれ、
「うちはゼニも出すぜ」
 とニヤリ。さすがの東尾も青くなっていたという。

 ちょっといい話は阪神キャンプの江夏豊
 ある日、大の江夏ファンという中2の少女がキャンプ見学にきた。詳しいことは分からないが、この少女、ケガで松葉杖をついていた。
 彼女が見ていたこともあり、江夏はブルペンで予定外のピッチング。終わった後、彼女のもとに近づき、握手をした。
「江夏さん、ぜひとも頑張ってください」と激励され、
「頑張りますよ。応援してね」
 と江夏。午後のシートバッティングでは快刀乱麻のピッチングを見せたという。
 ネット裏では、
「江夏のやつ、不幸な人には優しいんだ。気が強いようでいて、涙もろい。きっと少女に励まされて燃えたんだろう」
 とウワサしていた。

 では、またあした。

<次回に続く>

写真=BBM
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