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45歳で逝去…高速シュートで「落合博満の天敵」と呼ばれた右腕は

 

打者の胸元をえぐるシュート


横浜で主にリリーフとして活躍した盛田


 球界で史上唯一の三冠王3度獲得した天才打者・落合博満の「天敵」と呼ばれた右腕がいる。横浜、近鉄でセットアッパーとして活躍した盛田幸妃だ。落合との対戦成績は通算50打数9安打、打率.180。脳腫瘍から復活してカムバック賞も受賞している。「奇跡のリリーバー」は内角をえぐる高速シュートがウイニングショットだった。

 盛田は北海道鹿部町生まれ。5歳のときにリンパ肉腫で亡くなった弟が遺したおもちゃのグラブで遊ぶようになったのが、野球生活の原点だった。身長186センチから投げ下ろす快速球を武器に、函館有斗高で甲子園に3度出場。ドラフトで長嶋一茂のクジを外した大洋から「外れ1位」で指名された。不思議な縁でつながっていたのだろう。漁師だった盛田の父親は出漁中に虫垂炎にかかり、大洋漁業の船に収容されて一命を取りとめた過去があった。盛田は大洋にドラフト指名された際、「今度は僕が(大洋を)助ける番」と恩返しを誓う。そして、有言実行の活躍で大きく貢献する。

 高卒1年目の88年から一軍登板を飾り、徐々に登板機会を増やす。92年に14勝6敗2セーブとブレーク。52試合登板のうち46試合が救援登板だったが、3イニング以上のロングリリーフも何度もこなして規定投球回に到達。最優秀防御率を獲得した。94年に登録名を「盛田幸妃」から「盛田幸希」に変更。背番号も「15」から、前年引退した斉藤明夫の「17」を継承する。同年は開幕前に右ヒジを手術した佐々木主浩に代わり守護神を務めるなど46試合登板で8勝4敗16セーブ、防御率2.48。95年もリーグ最多の57試合登板で8勝4敗5セーブ、防御率1.97と球界を代表するセットアッパーとして光り輝いた。

 当時全盛期だった盛田の投球はすごみを感じさせた。ムチのようにしならせた腕の振りから150キロを超える直球に加え、140キロ後半の高速シュートが打者の胸元をえぐる。制球が決して良いわけではなかったのも打者は恐怖感を覚えて腰が引けた。どん詰まりの打球で凡打の山を築いたが、時には死球を与えて打者に激高されるときも。だが、盛田も一歩も引かない。毅然とした表情でその後も内角を投げ続ける。負けん気の強さと覚悟を感じる投球スタイルだった。

 97年オフに中根仁との交換トレードで近鉄へ移籍すると、登録名を「幸妃」に戻す。横浜で救援から先発転向後は思うような結果を出せなかったが、近鉄で再びセットアッパーに戻ると32試合登板で5勝1敗1セーブ、防御率2.91の好成績をマークする。しかし、体に異変が起きていた、5月末頃から右足首の違和感や麻痺などの症状が出て次第に悪化。8月13日に一軍登録抹消された。病院で検査を受けたところ、ゴルフボール大の髄膜腫が見つかり、9月に摘出手術を受ける。

 このときまだ28歳。医師から野球選手として復帰することは厳しいことを伝えられたが、盛田はあきらめなかった。必死のリハビリと驚異的な回復力で翌99年のシーズン最終戦で一軍復帰した。

01年にカムバック賞


近鉄で大病から復帰後、01年にヤクルトとの日本シリーズにも登板


 大病から復帰後は右足首に特製のギブスをつけて投げ続けた。軸足の右足が思うように動かせない状況は想像を絶する苦労があっただろう。だが、盛田は悲壮感を見せずにマウンドで淡々と投げる。高速シュートは往年のキレではなかったが、緩い変化球を交えてゴロを打たせる投球術で活路を見出す。01年は6月13日のダイエー戦で1082日ぶりの白星を飾り、球宴も中継ぎ投手部門でファン投票1位に選ばれて出場する。34試合の救援登板で12年ぶりのリーグ優勝に貢献し、カムバック賞を受賞した。

 翌02年限りで現役引退を決断する。通算成績345試合登板で47勝34敗29セーブ、防御率4.05。引退会見で、「自分にやれることは終わったかなと、気持ちの上で満足したことが大きかった」と穏やかな表情を浮かべた。ユニフォームを脱いだ後は古巣の横浜(現DeNA)で球団職員を務めながら解説者として精力的に活動していたが、病魔が体を蝕む。05年に脳腫瘍が再発。手術は成功したが、その後も癌が転移して再発を繰り返す。15年10月16日に逝去。45歳の若さだった。

 生前は闘病生活を続けながら、横浜スタジアムを訪れていた。首脳陣、選手、OBたちと楽しそうに会話をしている姿を見ると、野球が生きる上で大きな活力になっていたのだろう。代名詞の「高速シュート」だけでなく、盛田の生き様は多くの野球ファンの心に深く刻まれている。

写真=BBM

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