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Daiki’sウォッチ

なぜ、43歳の福留孝介は現役続行の思いが消えないのか/Daiki’sウォッチ

 

「野球ってやっぱり楽しい」


今季は43試合の出場で打率.154、1本塁打に終わった


 2020年シーズン終了後、球界最年長選手である福留孝介阪神を退団後も走り込みを続けていた。今オフは鳴尾浜でのトレーニングに加えて、阪神に移籍後、住み慣れた関西の街である神戸や西宮の街中をロードワークしているという。

「今年はよく走れているんだよね。時間を見つけてはロードワークに繰り出した。関西だけでなく、関東遠征時にも街中をランニング場所にして、比較的長い距離を走ることができた」

 21歳からプロの世界に身を置き、43歳となった今、日本とアメリカで22年間プレーを続けてもなお、強靭な体に大きな痛みを感じるケガはなく、メンタル面も充実している。

「肩ヒジに不安はなく、体の状態は良い。野球ってやっぱり楽しいよね。好きなことを仕事にできている喜びを今も常に感じている。野球を嫌いだとか、選手をやめたいだとか、この世界から抜け出したいと思ったことは1度もないよ」

 私がMCを務める関西でのラジオ番組収録時に鹿児島の故郷から出てきたときの話に始まって、今に至るまでさまざまな経験を福留孝介らしく快活に話してくれた。

「PL学園野球部に入部したときも練習が苦しいなんて1度も思わなかった。甲子園に出たくてPLに来たんだから厳しい練習や環境は当たり前。メジャーに行ったときも、よりレベルの高い場所を求めに行ったんだから大変な環境で当たり前。その状況を楽しまないと。失敗なんてなくて、それは成功へのきっかけだから」

 福留孝介の言葉は弾むようにテンポがよく、心地が良かった。

 43歳の大ベテランの生き生きとしたまなざしを見て、中日時代の2007年にインタビューさせてもらったときのことを思い出した。

「ドラゴンズを出て、カブスに行くけれど怖さはありませんよ。失敗や挫折なんてないですから。挫折かどうかを決めるのは自分であって、これは挫折ではなく乗り越えるべきハードルであり、レベルアップするためのチャンスだと僕は思っています。だからメジャーに行ってもすべてプラスになると思っているんです」

「まだ成長できると思う」


メジャーではカブス(写真)、インディアンス、ホワイトソックスでプレー


 2008年からメジャー・リーグで5年間プレーし、2013年に阪神で日本球界復帰。22年間で日米通算の出場試合数は2500試合を超え、ヒット数も2400本を超え、日本球界に名を残す選手の1人となった。

 例年、オフに入ると体を1度リセットするために年が明けるまではバットを持たなかった福留孝介。しかし、今オフは新天地への可能性を信じ、日々トレーニングを続けている。

「常に追いかけられる存在でありたいとは思っているよね。それが成長できる理由であり、プレーを続ける原動力。まだ成長できると思っているよ」

 変則日程によって、日本シリーズが終わってからの移籍交渉期間が短い今オフ。日本球界の偉人の1人でもある福留孝介の魂には、まだまだ消えることのない現役続行への灯がともっている。

「悩んだときには孝介さんに相談する」という若手が中日時代も、阪神時代も多くいた。メンタル的に苦しくなった若手を助けてあげられる思考力と経験が福留孝介という男には宿っている。

 40代に半ばとなっても外野の守備位置に立ち、肉体的にも精神的にも強靭な福留孝介をあらためていつまでも見ていたいと思った時間だった。

文=田中大貴 写真=BBM、Getty Images
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