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ベースボールゼミナール

うまくヒジをたたんで打つということは?/元ソフトバンク・柴原洋に聞く

 

読者からの質問にプロフェッショナルが答える「ベースボールゼミナール」。今回は打撃編。回答者は現役時代に巧打の選手として活躍した、元ソフトバンク柴原洋氏だ。

Q.中学のクラブチームでコーチの手伝いをしているものです。よく解説者の方が「うまくヒジをたためましたね」とテレビで解説するシーンを見ます。そもそもヒジをたたむというのはどういうことですか? ワキを締めることとは異なりますか。(東京都・40歳)



A.ニュアンスの違いですが、意識すべきはヒジです。ヒジがたためないとヘッドが下がり、投球に負けてしまいます

巧みな内角打ちを見せる巨人坂本勇人


 言い方は人それぞれで、ニュアンスの違いも出てきてしまうので一概には言えませんが、質問のケースのように「ヒジがたためていない」とか、「うまくヒジをたたみましたね」というような表現をプロ野球の解説でも用いることがあります。このとき、私の意識は質問の方が挙げてくれているワキではなく、あくまでもヒジにあって、「ヒジがたためている」=「ヒジを閉じている」という意味で使っています。見ようによっては、ワキを締めているように見えますが(ややこしいですね)、これはバッターのヒジの使い方の問題です。

 ちなみに、ヒジがたためないと、ヘッドが下がり、ボールに対して切るようなスイング軌道となってしまい、スイングに力がありませんから、ボールの威力に負けてしまいます。特にインコースのボールに対してヘッドを立てるためには、ヒジをたためている必要があります。ヒジをうまくたためたバットの使い方とは、例えばインコースのボールに対して、ワキを開けてリラックスして構えた状態から、ヒジを意識的(実際の試合では無意識でしょう)に閉じてワキ腹につけ、肩越しからヘッドを立てて最短距離でスムーズにバットを出し、リストターンしていくことです。

 実は以前、「ヒジをたたむ(ヒジを閉じる)」「ワキを締める」で、関係者とどちらの表現のほうが選手たちにとっては分かりやすい表現なのか、と議論したことがあります。最終的には「ヒジをたたむ(ヒジを閉じる)」に落ち着いたのですが、「ワキを締める」と表現してしまうと、ボクシングのガードではないですが、ここを意識してギュッと締めてしまい、動きに余裕がなくなってしまう恐れがあるという結論に達しました。言葉で表現するのは難しいのですが、あくまでもヒジを閉じていき、ワキ腹につく過程で、結果として、ワキが絞められている(ように見える)だけであって、(繰り返しになりますが)意識するのはヒジだということです。

 ただ、これも受け取る選手の感覚はそれぞれで、「ヒジを閉じる」と表現したほうがスムーズにスイング(リストターン)ができる選手もいれば、逆に「ワキを締める」と表現したほうがスイングをしやすい選手もいて、ここは指導者の腕の見せどころ。どちらの表現のほうがあっているのかで使い分けてあげるといいと思います。

●柴原洋(しばはら・ひろし)
1974年5月23日生まれ。福岡県出身。北九州高から九州共立大を経て97年ドラフト3位でダイエー(現ソフトバンク)入団。11年現役引退。現役生活15年の通算成績は1452試合出場、打率.282、54本塁打、463打点、85盗塁。

『週刊ベースボール』2020年11月23日号(11月11日発売)より

写真=BBM
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