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「早川×入江×鈴木×木澤」東京六大学ドラ1座談会で見えた様々なキャラクター、関係性

 

入江の天然トーク


2020年のドラフトでは東京六大学から4投手が1位指名を受けた。左から明大・入江(DeNA)、早大・早川(楽天)、慶大・木澤(ヤクルト)、法大・鈴木(ロッテ)。小誌による座談会は、感染予防対策を講じて実施した


 1965年の第1回ドラフト会議から数えて、2020年は第56回。半世紀以上の歴史で、東京六大学野球連盟から4投手が同時に1位指名を受けるのは、今回が初めてである。

 週刊ベースボールでは早大・早川隆久(楽天)、慶大・木澤尚文(ヤクルト)、明大・入江大生(DeNA)、法大・鈴木昭汰(ロッテ)による「ドライチ座談会」を実現させた。

 約1時間の取材中、ボケ役に徹してくれたのは入江だった。「予定調和」では、何の面白みもなくなってしまう。そこで入江は時折、天然トークを展開して、3人を和ませてくれたのは、本当にありがたかった。

 こうして入江が周囲の笑いを誘おうとすると、すぐさま鋭い突っ込みを入れるのが早川の役割であった。頭の回転が早いからこそ、口を挟むことができる。マウンド上では常に冷静で、試合後の囲み取材でも理路整然と振り返る。そんな155キロ左腕の意外な一面を見ることができた。

 早川と入江、この2人は最も接点が多い。2016年夏の甲子園準々決勝。木更津総合高(千葉)のエースだった早川は作新学院高(栃木)の三番・一塁の入江に先制ソロアーチを浴びている。入江は大会史上7人目の3試合連続本塁打。主砲の一発で主導権を握った作新学院高は3対1で勝利し、その勢いのまま、54年ぶりの全国制覇を遂げた。早川は2、3回戦で連続完封勝利を飾っていた。準々決勝の初回に入江に打たれた「1球」を一生、忘れることはない。だからこそ、この秋のリーグ戦も、打席に立つ「対入江」は冗談抜きで、最も意識した。

 2人は夏の甲子園後、高校日本代表でチームメートとなった。約20日間、日の丸を背負ってきた仲。大学入学後も、身近な相談相手であったという。2人が語り合う下級生時代のエピソードはあまりにも生々しく、友情の深さを感じるやり取りだった。

 鈴木は常総学院高(茨城)のエースとして2年春、3年春、夏と3度の甲子園出場。早川、入江と同じ関東勢だったが、不思議と接触する機会はなかったという。当時は早川、鈴木に加え、花咲徳栄高・高橋昂也(現広島)、二松学舎大付高・大江竜聖(現巨人)の好投手4人は「関東左腕四天王」と呼ばれた。周囲はライバル関係を作るも、当事者同士は触れ合う機会がない。名前と実績が一人歩きしていたわけだが、鈴木は常に早川をライバル視していたという。

 甲子園のヒーローの一人であった鈴木だが、早川の背中はどんどん遠くなり、大学入学以降は引き離されるばかりだった。鈴木は1年秋にリーグ戦デビューを飾ったものの、大学の壁に直面し、2年時は春、秋とも神宮のマウンドを踏めなかった。3年春からはようやく登板機会に恵まれるものの「表舞台」に戻るまでの苦悩を、赤裸々に語っていたのが印象的だった。

みなが感心した「木澤語録」


 4人のうちで唯一、甲子園の土を踏んでいないのが慶大・木澤だ。慶應義塾高3年時は右ヒジに故障を抱えながらも、痛みを押して県大会で2試合に登板。最後は小学6年時(2010年)にマリーンズJr.でチームメートだった藤平尚真(現楽天)を擁する横浜高との決勝で敗れている。

 慶大での1年間のリハビリを経て、2年春に神宮デビューを飾った苦労人である。木澤は今回の座談会に際して、甲子園経験者3人の枠に入っていいのか? と、冒頭はやや控え気味であったが、圧倒的な言葉力により、すぐに独特の世界観を作った。

 生粋の慶應ボーイの発言には説得力があり、語彙も豊富。3人は木澤の発言に感心しながら、一つひとつの言葉に耳を傾けていた。特に入江はすっかり心酔してしまった様子で、のちには「木澤語録」を本人の了解を得ないまま、引用する暴走劇……。これも、入江なりの最大限の「リップサービス」であり、取材会場は大爆笑となった。

 大学4年間、東京六大学、神宮で戦った4人にしか理解できない、特別な空間が広がっていた。伝統あるチームのエースという、立場を背負ってきた共通認識。絶対に負けたくないプライドを持っていたが、一方で、強固な仲間意識があった。プロ入り後は4球団に分かれる。お互いが刺激し合い、NPBを背負う存在になってほしいものだ。

文=岡本朋祐 写真=田中慎一郎
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