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「27年連続」「16年連続」創価大が持つ誇りある2つの数字と向き合い方とは?

 

「批判されるのは、こっちだけでいい」


昨年12月17日に就任した創価大・堀内尊法監督(左)は「お前で勝負する!」と、最速152キロの4年生左腕・鈴木勇斗(右)をキーマンに挙げている


 創価大野球部には、誇りある2つの数字がある。東京新大学リーグで春、秋いずれかで優勝したのは27年連続。そして、秋の明治神宮野球大会出場をかけた横浜市長杯争奪関東地区大学選手権大会には唯一、2005年の第1回大会から昨年まで16年連続で出場している。

 昨年12月17日に就任した創価大・堀内尊法監督は練習始動日となった1月9日、冒頭のミーティングで学生たちにこう語りかけた。

「(27年連続、16年連続は)忘れよう! 白紙で、ガムシャラにできるか。(仮に負けて)批判されるのは、こっち(監督)だけでいい」

 あくまでも、この記録は歴代の先輩たちが積み上げた偉業だ。学生野球は毎年、選手が入れ替わる。つないでいくことも大切なことだが、過度の重圧を背負わせたくないという。

 堀内監督はなぜ、このタイミングで伝えたのか。

 昨秋まで37年率いた岸雅司監督が勇退。先述の2つの数字は、前指揮官の実績である。岸監督の下で30年仕えてきた堀内コーチが新監督に昇格した。「比較されようが、偉大なので及ばない」とプレッシャーを感じていた。察知していた岸前監督は「堀内は、自然体で良いんだよ」と伝えた。「あの言葉で、楽になりました。私がヨッシャー! と背伸びをしようとすると、学生も背伸びする。それでは、良いものも出せない。私自身を第3者の視点から見ても、自然体のほうが結果は出ている。コーチの延長線上でやろう、と。岸前監督が築いた伝統を継続する形で指導しています」。

新コーチ人事に堀内カラー


 とはいえ、堀内カラーも打ち出した。新コーチ人事である。これまで指導してきた佐藤康弘投手コーチに加え、大学側からは新たに1人のコーチ要請の了承を得ていた。選出については、堀内監督に一任されていた。

「大学の協力態勢には本当、感謝しています。社会人出身、元プロでも良いと言われていました。実際、そのほうが、私は楽だったかもしれません。でも、技術だけではなく、心のケアもできるコーチが必要である、と」

 準優勝だった昨年11月の関東大学選手権後、白羽の矢を立てたのが、昨年のチームで学生コーチを務めた井上建(関西創価高)だった。すでに就職も決まっており、当初は「何の実績もないので……」と固辞してきたという。しかし、堀内監督は引き下がらなかった。

「メンバー、メンバー外、学生コーチとすべてを経験している。それが、最高の実績。学生との距離が近く、気持ちを理解しており、彼以上の人材はいない。私は昨秋からベンチでサインを出していましたので、三塁コーチを井上に任せました。三塁コーチは自分で『好判断』だと思っても『好走塁』と評価されますし、アウトになれば批判の嵐……。やった人間にしか分かりませんが、褒められる場所ではない。井上には、その適性があります。昨秋は好判断のたびに、称賛しましたよ」

 実は堀内監督も創価大卒業と同時に、創価大コーチに就任。学生目線に近い指導者の重要性を、身をもって感じてきた。就任要請を受けた井上コーチは、2月から合流予定である。

駅伝部が良いスタートを切って


 さて、現役学生は新指揮官からの「忘れよう!」「白紙」をどのように受け止めたのか。ドラフト候補に挙がる152キロ左腕・鈴木勇斗(新4年・鹿屋中央高)は力を込めて言う。

「リーグ優勝、そして、まだ、達成できていない日本一です。監督が代わっても『創価大は、大丈夫だぞ!』というところを見せたい。自分たちの代で、就任1年目から、監督には良い思いをさせたいです」

 創価大と言えば新年、箱根駅伝での総合2位が記憶に新しい。堀内監督は言う。

「今年は大学創立50周年なんです。駅伝部が良いスタートを切って、野球部としても決意があります。2位。どこかで突破せんとイカンです。良い勢いで、僕たちも頑張れます」

 学生には重圧を背負わせないが、監督は違う。

「責任者としては持続させないとアカンです」

 誇りある2つの数字を追求するが、いつかは途切れるものだと思っている。「ウチは立ったままなんです。1度、しゃがんでから、いかに立ち上がれるか。そこが、ポイントです」。昨年まで30年、コーチとしてバックアップしてきただけに、危機管理能力が高い。とはいえ、今シーズンにかかる「28年連続」「17年連続」はやはり、向き合うべき現実となる。

文=岡本朋祐 写真=BBM
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