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川口和久WEBコラム

2021年の注目は平成の怪物対令和の怪物、田中将大対佐々木朗希だ/川口和久WEBコラム

 

日本中が待ち望む対決


ロッテ・佐々木


 今シーズンの最大の注目は、先日、メジャーからの復帰が決まった楽天田中将大だ。キャンプ合流は遅れるようだが、2013年、あの24勝無敗のピッチングが、メジャーで、どう磨かれたのか。俺も敵側の巨人コーチとして、13年の日本シリーズで目の当たりにしただけに興味深い。

 もう一人の注目が、前年のスーパールーキー、ロッテの佐々木朗希だ。高校時代から160キロ超の真っすぐを投げた逸材だが、昨シーズンは試合に投げていないし、正直、情報もほとんどなかった。それこそ故障したのかと心配になるくらいだった。

 ただ、まさに秘密のベールの中で、ようやく一軍で戦う態勢が整ったのだろう。自主トレではキャッチャーを立たせながら投げ込む姿が報じられ、キャンプでも初日から投げていた。

 実際、10代のピッチャーのプロデビューは難しい。マー君のように1年目から一軍で投げさせてそのままエースへ上り詰めていく例もあるし、通用せず、自分のピッチングを見失ってそのまま消えてしまったり、1年目だけよくても故障してしまう例もある。

 俺は社会人を経てのプロ入りだったが、力不足もあって、最初の1年はほぼファームでトレーニングを積んだ。きつかったが、このときにプロに対する不安要素をうまく払拭できたとも思っている。課題の修正だけじゃないよ。「ああ、これはこのままでいいんだ」と思ったことも多い。

 漠然と「プロ野球」という未知のものに抱いていた恐れが薄らぎ、同時に1年間、野球を続けるだけの体力もついた。
 周りからはドライチでもあって、いろいろ言われ、焦りがなかったわけじゃないけど、のちのち考えると、大きい1年だったと思う。

 映像を見ると佐々木はフォームのマイナーチェンジをしたようだ。

 目についたのが足の上げ方だ。太ももは同じくらい上げるが、以前は、つま先もピンと大きく跳ね上げていた。今はヒザが一番高く、ヒザから先は脱力しながら、流れの中で自然と上がる感じになっていた。

 まだ、軽く投げているからというのもあるが、これはいいと思った。佐々木は、より速い球を投げるために大きな動きがしたくて、つま先を上げていたのだと思う。それはそれで悪いわけではないが、あそこまで上げると、どうしても余計な力が入り、自然と上半身で投げるフォームになりがちだ。

 あとは背中がそってしまうので、試合序盤はいいが、疲れてくると、どうしたって制球は安定しなくなる。

 今のヒザから先を殺したフォームは、上半身に余計な力が入りにくいし、足を上げたとき、リラックスさせ間を作ることができる。ボールを受けた捕手の田村龍弘は「あいつは半分の力でも150キロくらいは出る」と驚いていたようだが、あの上背とあのフォームがあれば、スピードガンが150キロでも打者の体感は160キロ近いだろう。

 今は球速を求めるより、制球力や長いイニングを投げ切る体力をつけたほうがいい。このフォームは体の負担も軽減され、より実戦的になったかな、と思った。

 覚醒前夜の令和の怪物だが、彼と平成の怪物田中の対戦は楽しみだ。まさに日本中が見たい夢の対決と言っていいだろう。
 もちろん、そのためには佐々木が先発の軸になるくらい成長してくれることが条件だけどね。

写真=BBM
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