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センバツ2021

初の甲子園は貴重な“学習の場”。八戸西の189センチ右腕は課題を克服して夏に戻ってくることを誓う/センバツ2021

 

5回5失点と力を出し切れず


八戸西の189センチ右腕・福島は具志川商との1回戦で先発し、5回5失点で降板。本来の力を出し切れなかった


 今大会の登録は189センチ72キロ。一冬を経て2キロ増えたが、細身のイメージはまだ拭えない。成長段階にある八戸西のエース・福島蓮(3年)。初の甲子園での86球は貴重な経験であり、学習の場となった。

 21世紀枠同士の対戦となった具志川商との1回戦。雨天順延により迎えた一戦で先発した福島は5回5失点(自責点3)と、本来の力を発揮できなかった。この日の最速は139キロと、自己最速の143キロに及ばなかった。マウンドを降りてからも、三塁ベンチから懸命に声援を送ったが、チームは3対8で敗退した。

 やはり、これが、甲子園の難しさなのか。冬場は下半身を鍛え、投球フォームは体重移動を意識。対外試合解禁以降は制球力に手応えを得ていたが、思いどおりに体が動かなかった。

 立ち上がりから、ストレートが上ずっていた。力みが入ると、シュート回転する場面も見られた。途中、ノーワインドアップからセットポジションやクイックなど、修正を重ねた。また、バッテリーを組む藤本楓都(3年)はストレート主体からストライクを優先にカーブ、スライダーなどの変化球を使い、目先を変える工夫を見せた。だが、具志川商は積極的に振ってくるスタイル。出塁すれば、エンドランなど、足で揺さぶりをかけてくる。具志川商・喜舎場正太監督は試合後に「福島君は好投手。少ないチャンスだと思ったので、自分たちから仕掛けていきました」と攻撃の意図を明かした。

 福島は終始、自身のリズムで投球することが難しかった。相手打者は、好機ではやや浮いた真っすぐを、見逃さなかった。

 なぜ、ボールが荒れてしまったのか。福島は試合後にこう反省を口にしている。

「ふだんはストレートが外角に決まるんですけど、制球できず、変化球も高めに浮いた。納得のいくストレート? ほとんどなかったです。真っすぐの質を高めないといけない。コントロールを磨いた上で、球速、回転数も大事になる。試合前は楽しんで勝とう、というのがあったんですが、甘くはなかった」

 福島は昨秋、公式戦全9試合に登板。青森県大会準優勝で出場した東北大会では1勝を挙げ、準々決勝に進出している。

 センバツが終わり、勝負は夏である。青森勢の甲子園出場校は2010年から19年までの10年で八戸学院光星の6回を筆頭に、青森山田、三沢商、弘前学院聖愛、八戸工大一が各1回(昨夏の独自大会は青森山田が優勝)。公立校は15年の三沢商のみで、弘前実以来19年ぶりだった。八戸西も今夏、私学優勢の勢力図を切り崩したい強い思いがある。八戸西は昨秋の県大会決勝では、八戸学院光星に3対14と大敗。青森代表として、夏に甲子園の土を踏めるのは1校。福島は決意を語る。

「(今回のセンバツで)夢の舞台に立てたのはうれしかったんですけど、もう一度、仲間たちとこのステージに戻ってくるために、自分の修正もして、チームワークも上げていきたい。今日が今季最初の公式戦。これから試合勘も慣れ、課題を克服して、夏は絶対に優勝して(甲子園に)帰ってきたいです」

 未完の大器・福島の好きな投手は大谷翔平(エンゼルス)。センバツのマウンドをステップに、さらなる向上を誓う。福島の最大の強みは、全国舞台を味わった経験値。甲子園でしか学べない「教材」を故郷・青森へと持ち帰る。

文=岡本朋祐 写真=高原由佳
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